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近代化に向けて

  • 海星学園中央館を設計した吉阪隆正 2007年09月19日
    海星学園中央館を設計した吉阪隆正
    建築家 吉阪隆正  海星学園の歴史は古く、明治25年(1892)に南山手の大浦天主堂の近くに、マリア会員のジャック・バルツによって創立されました。 3年後にこの東山手の地に移転して以来、約115年以上の歴史を誇るカトリック系のミッション・スクールです。  吉阪隆正氏が設計したのは海星高校の中央館。彼は早稲田大学理工学部建築学科を卒業し、近代建築の四大巨匠のひとりル・コルビュジェのアトリエで学んで約6年後にこの校舎を設計しました。 その後すぐ早稲田大学の教授となり、建築学会の会長を務め、日本のモダニズムを代表する建築家となりました。  余談ですが、前回のコラム「浦上そぼろを作ろう!」に登場した蘭学者・箕作阮甫(みつくり げんぽ)さんを覚えていますか? そう、対露交渉団として長崎にやってきて「浦上そぼろが食べたい!」と語った人物です。 実は、吉阪隆正氏は、箕作阮甫(みつくり げんぽ)さんの玄孫(やしゃご)にあたる人でした。  校舎の壁にはカラフルなモザイクがデザインされています。 校舎のいたるところに、ル・コルビュジェの造形にも似たデザインと遊び心がちりばめられています。 早速、建物の中におじゃまして、見学させてもらいました。 中央館のエントランス  中央館へとおじゃまします。 エントランスにあるマリア様のモザイク画にちょっとビックリしながら、奥へと進みます。  写真を撮っていると、建築を学んでいるといいう大学生に廊下ですれ違いました。 名建築を巡る旅をしているそうです。 階段に隠れた機能を発見!?  屋上にマリア様が乗る台座となっている塔の部分は螺旋階段です。 壁には長方形や正方形の小窓が付いていて、差し込む日差しを、丸みを帯びた白壁に反射し、空間を柔らかく包んでくれます。 小窓からは長崎の港が見え、さらに180°上り下りすると修道院の建物が見えます。 絵画の額縁にように切り取られた風景が楽しい螺旋階段は、心にくい演出です。  階段の真ん中の円筒形の部分を見てください。 芯のようなこの部分には、ある機能が隠されています。 何だと思いますか? 正解はダスト・シュート。 各階ごとに小さい扉が付いていて、ゴミを捨てると1階にゴミが集まる仕組み。 最近は、老朽化のため使用していないそうです。 教室と廊下のディテール  これは西側を向いた廊下。 突き当たりにある窓は、ル・コルビュジェの代表作ロンシャンの教会の窓にも似たディテール。 西に向いていますので夕陽が差し込むとオレンジ色のステンドグラスのように変化して、陰影がキレイでしょうね。 教室手前の廊下へ斜めに突き出た壁、これは防音対策だったんです。 案内してくれた光岡先生は「不思議と隣の教室の声が聞こえないんですよ。」とおっしゃっていました。 そして、熱い夏には教室の窓の下部と上部の窓を開け放つと、南から北へと心地よく涼しい風が通り抜けるという機能と、遊び心を備えたディテールです。 こんな教室、カッコよすぎで、学園生活がちょっとうらやましいです。 東山手の風景  グラウンドのある南側から見た校舎です。 環境に配慮したデザインはまだまだあります。 各教室の窓の上に付いた庇は、大雨の時でも教室に雨が入り込むことはありません。 ただ、ベランダがないので窓を拭くのは大変だそうです。  中央館の奥に見える赤い屋根は、大正15年(1926) にW.M.ヴォーリズが設計した活水女子大学本館です。 明治に建てられた洋館とモダニズムの建築家が設計した建物が並ぶ東山手は、"学び舎の丘"という歴史を持つ長崎の東山手ならではの風景かもしれませんね。 参考資料 (株)一粒社ヴォーリズ建築事務所HP