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ポルトガル語の古文書がひもとく、横瀬浦の真実

 

 1550年にポルトガル船が入港し、フランシスコ・ザビエルが訪れた。南蛮貿易とキリスト教布教の拠点として栄えた平戸にかわって、1562年、歴史の舞台へと登場した横瀬浦。
西海市教育委員会の諏訪勝郎さんにインタビュー。16世紀のポルトガル語で書かれた本『イエズス会日本書簡集』を訳しながら、約420年前の横瀬浦の様子を語ってくれた内容から、当時の町の風景がより鮮明に浮かび上がる。

天主堂の謎
諏訪 勝郎

 横瀬浦公園にある天主堂跡の碑。実は、当時建っていた位置と違うんです。実際は丘のふもと、舗装された道路の周辺に教会があったと思われます。1562年10月25日付のアルメイダの書簡を読みますと「入江から入って右にキリスト教徒の集落があります。その対岸に私たちの家(つまり教会)があります。対岸へと架けられた石の橋があり、橋のたもとから7段を数える階段があります。階段の上に前庭があり、さらに4段上がって大きな門を潜り、四角形のパティオを通り、その奥に教会が建っています。」とあります。翌年の記録には教会の階段が増えていますが、その間に教会自体を移築するということは考えにくいでしょう。教会はそのままに、階段を増築したのではないでしょうか。フロイスの記述で「横瀬浦は日本で最も知られたキリシタンの町になった」と報告されています。その記述は本当だと思います。平戸で貿易ができなくなり、開港していたのは横瀬浦だけですからポルトガル商人だけでなく、遠くは京都からも日本の商人たちが集まっていました。横瀬浦の教会は九州でも数少ない教会のひとつ。ミサを行えるのは神父さんのみで、修道士ではできません。ですから、毎週日曜日になると、各地からキリスト教徒たちが船に乗って横瀬浦の教会に集まっていたことがわかります。その賑わいは凄かったと思います。」

わずか1年で壊滅した横瀬浦が物語るもの
横瀬浦の海

 キリスト教布教期でも最も幸福な1年ともいえますし、西洋人やその文化を目の当たりにした日本人の衝撃や、南蛮貿易での繁栄があるいっぽう、一瞬にして燃えて無くなり今は何も残っていない空虚感とが並存しています。当時の日本の歴史の象徴的なものを見せているのが横瀬浦だと思います。1563年、純忠の家臣で反キリシタン勢力からの焼き討ちにあった後のポルトガル人たち。実は再度(1564年に)横瀬浦に来てるんですよ。ルイス・フロイスの『日本史』に、「いまだ住民が絶えたままで入港することができないので、平戸へと航路をとった。」とあります。焼き討ちも無くそのまま貿易を続けていれば、横瀬浦が長崎だったかもしれませんね。」。

発見! 長崎の地名に良く似た言葉

 「長崎の地名に横瀬浦がルーツと考えられるものがあります。上町、思案橋、丸山以外にもあるんですよ。長崎の「大波止」。実は、横瀬浦に「小波止」と呼ばれた所があります。当時の大村純忠の館のそばにあった小さな船着場のことです。純忠はその小波止から船に乗って教会へ通っていたとも考えられます。波止場が長崎では大きかったので大波止と呼ばれるようになったのでしょうね。」

西海市での取り組み
旅する長崎学シンポジウム

 「横瀬浦に伝わった歌があります。1563年4月17日付の修道士フェルナンデスの書簡に記されている、復活祭で歌っていたアレルヤやラウダーテという歌です。昨年、西海北小学校6年生児童が歌い、CD化しました。地元の人々の協力を得て、横瀬浦で演奏会を催したときは、イルミネーションを飾り、当時の復活祭の様子を偲びました。また今年は、西海南小学校6年生のみなさんと古楽器アルパを使い、16世紀の西洋音楽を披露する演奏会を催しました。中浦ジュリアンたち天正遣欧少年使節が秀吉に謁見した際、彼らが古楽器ラウデ(リュート)、アルパ(ハープ)、ラヴェキーニャ(小型のレヴェック)、クラーヴォ(鍵盤楽器)を演奏し歌ったことにちなんだ企画です。西海市(西海町中浦)出身といわれる中浦ジュリアンや郷土の歴史を学ぶとともに、キリシタンの時代をイメージし、歴史を身近に感じられるような体験ができればと考えて実施しました。日本で最も早い時代に西洋音楽に触れた地域のひとつが、ここ西海でしたから。」

諏訪 勝郎 Katsurou Suwa

1966年愛知県出身。大阪芸術大学卒業、ポルトガル国立ポルト大学文学部及びポルトガル国立ミーニョ大学文学人文科学院留学。著書に『ポルトガル・ノート』(彩流社)がある。当時、西海市教育委員会学芸員。



うんちくバンク

人物
  • 大村純忠
  • 中浦ジュリアン
  • ルイス・フロイス
歴史事件
    資料
      場所
      • 大波止
      • 横瀬浦公園
      その他
      • イエズス会

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