たびながコラム

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教会巡りからはじまった歴史の旅

教会の魅力を伝える人たち その1

犬塚明子さん

 『旅する長崎学 キリシタン文化』の2・5巻や『長崎游学2 長崎・天草の教会と巡礼地完全ガイド』の構成と執筆を担当した犬塚明子さん。彼女は今、カトリック長崎大司教区と長崎県が協議を重ねて新しく発足させた「長崎巡礼センター」(長崎カトリックセンターの1階)で、インタープリターとして活動を開始しています。長崎の上質な旅へと誘う発信源として、巡礼コースなどを一般の方に紹介しています。これまで、数多くの教会に関する本を執筆し、ライフワークとして教会堂を追いかけ続ける犬塚さん。カトリック信者ではない彼女が、なぜ教会の魅力を紹介する仕事に一生懸命なのでしょうか?犬塚さん独自の目線から見た教会堂の魅力に迫ります。

教会堂を巡るきっかけは?

犬塚明子さん

 「父方はカトリックですが、私自身は、教会には縁のない環境に育ったんです。

 でも、20代後半を迎えたある日、教会建築を撮影するカメラマン 雑賀雄二さんのエッセイを読んだのです。ページを一枚一枚めくるたびに、自分の心がいつしか、実際に教会を訪れずにはいられなくなっていました。それで、もう上五島に足が向いて、江袋教会など、いろんな教会堂を訪れました。

 そのとき、頭ヶ島天主堂を訪れた見ず知らずの私に「私のおじいさんたちが(といったと思います)、島の山から石を切り出して、ひとつずつ積み上げてこの頭ヶ島天主堂が完成したんですよ。」と、語りかけてくれたのです。その話を聞いてふと感じたのが、きっと代々親から子へと、この教会が建てられた当時の様子が伝承されてきたという、島の人たちが積み重ねた長い時間。そして、地元の方々との会話を肌で実感できたこと。それは、本当に涙がでそうなくらい「生(なま) 」の歴史に触れるという魅力を感じてしまったのです。この出会いがきっかけで、教会堂の魅力というか歴史の魅力にどんどん引き込まれていきました。

 五島の小さな集落に、どんなに小さくても実際に生活のなかに生きている教会堂。ひとつひとつに感動して、歴史にも感動してしまいました。それで「(自分は)長崎人だ!」って再認識したこの五島の旅が、教会堂に目覚めるきっかけとなったのです。 」

ライフワーク

1.教会堂は祈りの場。聖なる場所では私語をつつしんで!

旅する長崎学

  「その後、長崎市内にある某百貨店に勤めました。広報担当という仕事のおかげで、改めて長崎を見つめ直すことができたのです。階段脇のスペースを活かしての作品展示は、来店してくださったお客さまに見てもらえるステップギャラリーとして開放していました。展示の企画も、お預かりした作品の展示のほかに、自分たちの手で長崎の情報発信をしていこうという、まさに長崎の歴史テーマとしたものもおこなっていました。その中のひとつに「長崎の教会」というテーマがあって、そこで思い切って長崎の教会を見てまわったんです。この展示を通して「長崎は面白い!」って思い始めました。それで、長崎の面白さを伝える仕事に携わりたいと思った矢先に、長崎の教会ガイド『長崎游学2』(長崎文献社)という本をつくる仕事に出会ったんです。この、ガイドブックをつくりながら、教会のことをかなり勉強させてもらったんですよ。」

犬塚流「長崎の旅の楽しみ方」

 「バイクで行くんです。平戸の生月も行きましたよ。しかも50CCで(笑)!

山野教会のある集落

山野教会の内部

 「私のお気に入りは、生月大橋の手前にある山野教会です。いわゆるキリシタンの迫害を逃れて集落をつくった隠れ里のひとつですね。すっごくいいですよ。私の大好きな場所!今は外観が補修されていますが、中に入るとこんな感じ。本通りから人家のない山道を登って歩いたら30〜40分かかるような、山の奥にあるんです。ふと集落が現れて教会が見えるんですよ。教会の後ろにまわると畑が広がっていて、まさに集落の中にある教会。まさかこんなところに?というような場所なんです。善長谷教会や大山教会なんかもそう。香焼の方から善長谷教会を探すと、城山の中腹にチョンって見えるんです。「あれだ!」っていうオドロキ。教会堂って、何気ない風景のなかから、忽然と現れるんですよね。」
(写真は犬塚明子さんの撮影)

ひとつの発見…。“西”という姓からルーツを探る

 「個人的なことですが、私の祖母が生月の人で姓は“西”。生月の最初の殉教者が“ガスパル西”という人。その息子の“トマス西”は長崎十六聖人のひとりなんですよ。生月には確かに西姓の人がたくさんいらっしゃると思いますが、祖母と殉教者の苗字が同じだということを聞いて、どこか繋がりを感じてしまったんです。仏教用語でいう因縁というか縁というか、自分にも何か引っ張られるものがあるんだなぁということをすごく感じてしまいました。長い歴史の中に自分がいるということ。それを知ってから、自分は殉教者の子孫だと自称しています。自分が信者になれるかということは置いても、歴史の中に「私」がいるという事実が、ある意味、魅力であるような気がしたんですよね。このことは私の人生観を変える出来事でした。」

とある結婚式…、教会堂での失敗談

聖域

 「いとこが教会で結婚式を挙げるというので、私にカメラ係になって欲しいと頼まれたことがあったんです。「どこでも撮っていいから。」と言われたのですが、教会のことを何も知らなくて、内陣の中に入っちゃったんですよ。その時、みんなから冷やかな視線を向けられていたこともわからず、ただ私は、新郎新婦のシャッターチャンスを逃すまいと神父様の背後にまわって内陣に入ってしまったんです。それがいけないことだと後で知ったのです。私を含めてよく知らないのが実情だと思います。そういった教会堂でのマナーも紹介していくのもこれからの仕事ですね。」

長崎巡礼センターの使命

 「本を執筆しながら、長崎カトリックセンターとのご縁で、長崎巡礼センターのインタープリターとして仕事をしています。例えば、長崎の教会は、そこにただ建っているのではなくて、そこに信仰を守りつづけている人がいるから教会があるということ。たとえ小さな教会堂でも存在する意味がある。そのことを私自身が知りましたし、そのことを伝えたいと思いますね。「祈り」があるということも長い歴史を物語ります。例えば、外海から、ふるさとの石を乗せて船を漕いで五島へと渡ったと聞きます。たどり着いた場所ですごく苦労をして、200年という長く苦しい時間の先に教会が存在していること。そういう話を私が伝えることで、みなさんに感動してほしいですね。

 大切なことは、そこにある教会を語ることで、長崎の歴史も語っていけるということ。まだまだ勉強の途中ですが、少しでも長崎の魅力が伝えられるようにがんばります。

 みなさん、巡礼センターへ来て下さい!」

DATA

犬塚明子 Akiko Inuzuka

 1956年生まれ。長崎県諫早市出身。諫早市在住。日本女子大学生物農芸専攻。1990年から2003年まで市内の某百貨店の広報担当として勤務。2005年9月『長崎游学2 長崎・天草の教会と巡礼地完全ガイド』(監修/カトリック長崎大司教区 編/長崎文献社)を担当。 2006年5月『旅する長崎学2 キリシタン文化2』(企画/長崎県 制作/長崎文献社)、同年11月『旅する長崎学5 キリシタン文化編5』の構成・文を担当。2007年5月から長崎巡礼センターのインタープリターとして活動中。2007年9月には構成・文を担当する『ながさき巡礼』(監修/カトリック長崎大司教区 編/長崎文献社)を出版予定。



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        • 生月大橋
        • 頭ヶ島天主堂
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        • 長崎巡礼センター
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