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古楽器リュートの魅力(2)

〜永田さん&井上さんにインタビュー〜

リュート

 1582年に長崎からヨーロッパに旅立った天正遣欧少年使節は、1591年(天正19)、長い旅から帰国しました。1587年に豊臣秀吉が伴天連追放令を発布していたため、彼らは「インド副王使節」の一員として日本に戻り、聚楽第で秀吉と謁見しました。そこで西洋楽器による演奏を披露したといいます。4少年が持ち帰ったその楽器は、アルバ(ハープ)、クラヴォ(鍵盤楽器)、ラウテ(リュート)、レベカ(ヴィオール)でした。やさしい音色に魅了された秀吉はアンコールを所望し、演奏を3回も楽しんだそうです。
前回に続き、リュート奏者として活躍する永田斉子さんと井上周子さんへのインタビューをご紹介します。

リュートの魅力

井上周子さん

 井上さん「ライブに来てくださった方々のアンケートを見ると、心が安らぐ、癒されたという感想をいただいています。どんな風に楽しんでいただいてもいいのですが、一人の音楽家として思うのが、1つの音楽を私が聴いて感じたことが、リュートの弦を爪弾き空気を振動させていること。音楽を私という媒体を通して、お客さんと通じあう楽しさを会場で味わってほしいです。バスの中でひとりでiPotを聞いているのと違ってライブは楽しいですよ。 私の夫がレストランを経営しています。私が古い昔の音楽をやっていることもあって、夫も昔のレシピを調べて再現したりします。昔のレシピをみると非常に簡単でシンプルなんですよね。映画でローランド・ジョフィ監督の「宮廷料理人のヴァテール」の一場面にでてくるように、盛り付けてあるテーブルの横に花火や噴水などの演出に驚きます。食べることがスペクタクルで、このような宴を貴族が好み、そこに必ず音楽家がいました。王様が眠りに就くまで音楽が奏でられていたことから、今も昔も変わらないのは音楽と生活が結びついているということ。私は朝起きたらプチッと音楽を鳴らすほうなんですけど。ライブは、演奏は自分の表現ですね。」

永田斉子さん

 永田さん「確かに音楽と生活が結びついているのは素敵なことですよね。リュートの魅力は たった一人で自分のために弾くのもまた楽しいという点。理想としては私の演奏会にたまたまきてくださった方々が、自分も弾いてみたいと思って、弾く楽しみをもっていただけるといいなと思います。楽器の入手方法や習う場所などを考えてしまうと、そう簡単にはいかないのですが。自分が弾けたら日常の暮らしが心豊かになる、悲しいことがあってもそれを弾けば落ち着いていられる。また、たった一人の大切な人のために、そばで弾いてあげるとか、そういうことが音楽の究極のカタチだと思います。華やかなおもてなしのなかでの演奏もあり、また一方で、自分が落ち込んで悲しいときに、リュートを弾いてエネルギーを得ては次の日からまた頑張る、それもリュートの魅力です。」

人間が音楽を奏でる理由

リュート

 永田さん「モンゴルの人とお会いした時、伺った話があるんです。モンゴルでは見渡す限りの高原地帯で、人々は移住しながら生活をしています。年頃の人たちは男女の出会いのチャンスが非常に少ない。そこで偶然、年頃の男女が出会った時にどうするかというと、歌が得意な人は歌を歌い、踊りが得意な人は踊りを踊るんです。伴侶を得るために必死で披露するわけですよ。そのときのために備えて日々練習しているんです。その技が上手であれば相手の心を獲得し結婚して子孫繁栄となるのですが、演奏がイマイチで伴侶をえられなければ、結婚できず、次のチャンスまでまた長いこと待たなければならないのです。この話しを聞いて私は、なぜ人は音楽を奏でるのか、それは子孫繁栄のためなんだなと思いました。一対一なんですよ、基本的に。そして一期一会。演奏会の時もそう思いますね。客様が20〜30人と増えても、私は基本的に一対一で向かい合っていると思って演奏しています。」

 井上さん「ルネッサンスの場合はシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』もテラスで、音楽を爪弾きながら愛を語って、シラノ・ド・ベルジュラックの中のシーンでは2階の部屋に気づかせるために石を投げて、「なにかしら?」とテラスへ出てきたロクサーヌが下を見ると楽師たちが音楽を奏でて横で詩人が愛を語っています。」

長崎のお気に入りの場所は?

生月大橋

 井上さん「生月です! 休日なんかはよく生月に行くんですよ。佐世保に住んでいますので。車で運転すると、生月の島に架かる大橋のトラスが視界いっぱいにひらけて、そこに空があってスゴイですよね。私は出身が奈良県で大阪から電車で20分ぐらいのベッドタウンなので、今まで見たことのない自然がいっぱいな生月が大好きなんです。ひとけのないところにポツンとカフェがあったりして。波佐見もいいですね。焼物があって若い人たちがアートをやっているからよく遊びにいきます。軍艦島にも行きたいですね! 出島も好きで「和蘭(オランダ)商館の屋敷に住みたい!」と思ってしまいました。」

長崎で演奏してみたい場所

大浦天主堂のステンドグラス(長崎県観光連盟)

 永田さん「カステラを食べながらポルトガルの音楽を演奏するというコンサート、これは10年前に実現しました。今の夢は、大浦天主堂で演奏させていただくことです。天主堂で本当の宗教音楽を、17世紀の聖母マリアのための音楽をリュート2本、歌手2人、それにオルガンか、バロック・チェロを交えて演奏したいです。東京のほうではすでに披露していますので、ぜひ長崎の皆さんにも聴いて頂きたいですね。教会の多くは「教会堂は礼拝の場であって、コンサートホールではありません。」と言われることもありますが、それは大きな誤解で、宗教音楽は本来、教会堂で演奏されるために作曲されたものなのです。カトリックの信徒のためにかかれた音楽を、ふさわしい場所で演奏してみたいのです。心を込めて演奏したいと思います。」

「リュートを奏でる女がふたり」の永田斉子さん(右)と井上周子さん(左)

リュート

 長崎で奏でられていた西洋音楽は、当時のキリシタンの人々の心を癒し感動を与えていたのではないでしょうか。また、音楽を通して長崎の歴史を体感できるのは貴重な体験です。そのような機会が長崎に増えることを願って、永田さんと井上さんのご活躍に期待しましょう。

 永田さんと井上さんは、2008年1月26日(土)、江戸東京博物館にて開催される県主催のイベント「旅する長崎学講座トーク&コンサート -長崎発、歴史を未来へつなぐメッセージ。-」に出演されます。お近くの方は、ぜひお出かけください! お申し込み方法はコチラまで。

DATA
永田 斉子 Seiko Nagata

 長崎県出身、東京在住。国際基督教大学卒業。フランスのストラスブール国立音楽院古学科をディプロマを取得して修了。ルネサンス、バロック時代のリュートのソリスト、アンサンブルのメンバーとして活動中。CD「ふらんすの恋歌」、映画「耳をすませば」、NHK「迷宮美術館」「ルーブル美術館」など録音多数。「コンサートプロデュース・ルミエールプロジェ」を主宰。

オフィシャルサイト

ブログ

井上 周子 Chikako Inoue

 奈良県出身、佐世保市在住。東京音楽大学器楽学科(ピアノ専攻)卒業。在学中よりリュートを水戸茂雄氏に師事。1999年リヨン国立高等音楽院古楽器科にてリュート・通奏低音をE フェレ氏に師事。2003年フランスでは日本人ではじめてリュートの高等課程修了と同時にディプロムを取得する。ヴィルウルバンヌ国立音楽学校にてチェンバロ・通奏低音をAデュバール氏に師事、2004年にチェンバロ・通奏低音のディプロム取得。在学中より・通奏低音としてフランス各地で演奏活動に参加し、ジュラやモンペリエなどの音楽祭にも参加、帰国後、リュートニストとして活動するかたわら、ルネサンス音楽、初期イタリアバロック音楽のセミナーを開催するなど普及に努めている。2007年11月にリュートソロCD『melanges』をリリース

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        • 生月大橋
        • 大浦天主堂
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        • 伴天連

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