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黒島天主堂に感動!

〜天井板の技巧〜

黒島天主堂と木目が描かれた板

 今回の黒島天主堂行きは、長崎巡礼センターの中村神父様にインタビューした歴史発見コラムの第11回「教会巡礼のマナー 〜教会の魅力を語る人びと その2〜」でのお話がきっかけでした。質問の中で、中村神父流"巡礼のススメ"として黒島天主堂の魅力を教えてくださった、あるお話に興味がわいたのでした。

長崎巡礼センターの中村神父

 中村神父:黒島に着任したころ、じーっと天井をみていると「あれ?おかしいな。」と不思議に思ったことがあったんです。黒島天主堂はすごいことをしていたんですよ。「何を?」とお思いでしょう。なんとお金がなかったから良い材木を揃えることができず、普通の安価な板を買ってきて、その板に木目を描いているんです。刷毛目(はけめ)という工法なんですが、ニスを塗ってその上から木目を付けた。おどろくなかれ、天井板はすべて手描きなのです。ドアの一部もそう。お金がないというところからのアイデアなんですが、今になってみるとスゴイことをしているんですよ…。

 と聞いて、即座に「見てみたいです。行ってみます!必ず!!」と答えた私。そして実際に訪れてみて本当におどろきました。実は心の中では、「今でこそプリント合板が普通に流通しているけれど、明治のころにそんなアイデアがあるわけがない…」と、正直、半信半疑だったのです。しかし、実際に黒島天主堂をたずねてみると、当時の信徒のみなさんの手によって、驚くほどに緻密な板目が一枚一枚描かれていたのです。
今回は、"刷毛目"という工法で独特の雰囲気を生み出している黒島天主堂をご紹介します

いざ、黒島へ!

黒島旅客船のフェリーくろしま…佐世保市の相浦桟橋から出航します。

 実際に黒島へ行って、"刷毛目"という手描きの工法をこの目で確かめるしかない。カメラを持って、いざ、出発です! 長崎市内から高速バス2時間、松浦鉄道30分、フェリー1時間を乗り継ぐ小旅行。小雨がパラパラと降るあいにくの天気でしたが、波がおだやかだったので船上ではホッとひと安心でした。

黒島(佐世保市)

 フェリーが黒島港に到着しました。港では、先を急ぐ車、郵便物を受け渡して配達する姿、雨がやんだからか、何隻かの漁船が港を出発していくという、島の生活をちょっとだけ垣間見ることができました。岸壁から海中をのぞくと、底がまる見えで、泳ぐ魚の影がわかるほどの透明度に驚きでした。

 おっと、先を急がなくては…。

 港から黒島天主堂までは歩いていきます。

黒島港
黒島天主堂

歩いた道

 黒島港から山へと続く道を歩いていると、「ピーヒョロロ」とトンビが頭上を飛んでいました。ひたすら歩くこと約25分。黒島小学校まで来ると、黒島天主堂はすぐそこです。

 やっと到着しました。

小学校の付近から見た黒島天主堂

 黒島天主堂は、明治35年、フランス人宣教師のマルマン神父が設計したレンガ造りの教会堂です。内部は国宝の大浦天主堂と同じ3層構造、内陣の床には有田焼のタイルが張られ、上海製の聖人像、フランス製の聖鐘、ステンドグラスが施されたこの美しい教会堂は、黒島に住む信徒の皆さんの献金と奉仕によって完成しました。一部には黒島で産出された赤土で焼かれたレンガを使用しています。

静かに教会堂の内部を見学させていただきました。

黒島天主堂の内部


そして、今回、私をここに誘った"天井"をじっくり観察・・・。

3層構造と堂内にある燭台

バラ窓

内陣の床に敷きつめられた有田焼のタイル

刷毛目仕上げの擬似板とプリント合板の比較をしてみた

さぁ、あなたはどちらがプリント合板でどちらが刷毛目仕上げの擬似板かわかりますか?

プリント合板

黒島天主堂に使われている刷毛目仕上げの擬似板

 正解は、左がプリント合板で、右が刷毛目仕上げの擬似板です。
色合いが違いますが、どちらかというと刷毛目仕上げの方が逆にリアルな感じがしてきました。

天井板の手描きは、驚きの工法"刷毛目仕上げの擬似板"

黒島天主堂の入り口のドア

  教会を出ようとドアに手をかけた瞬間、ハッと驚きました。このドアの板目も刷毛目仕上げでした。
ドアの写真をクリックしてみましょう。アップで表示された木目がみえますか? 木目の線をたどってみると…、不自然に終わっていますよね。こんな木目はありません。あきらかに描かれたものなのです。

さらに、クローズアップ!

黒島天主堂の刷毛目仕上げの擬似板

 じかによく観察してみると、筆で板目を描いてあります。刷毛の跡が残るようにニスをサーッと塗り重ねて木目のディテールを表現しています。これは職人技に近い! すごい! 感動ーっ!!
そして、板の一枚一枚が個性的。太さ、濃淡、形もさまざまです。あきらかに一人の人間ではなく多くの人たちの手によって描かれていることが見てとれます。天井全体を見渡すと、まるで現代アートをみているようでした。

楽廊下部の天井

黒島天主堂の天井

 信徒の皆さんたちの、天主堂の完成にかける思いが刷毛目という工法に込められ、一枚一枚大切に大工さんが組み建てていったのではないでしょうか。当時の苦労が目に浮かぶようです。刷毛目仕上げの板だけでなく、赤レンガも信徒の皆さんが手づくりしたレンガなんだそうです。
刷毛目仕上げの板は、天井板と開口部の扉すべてに使用されています。どれだけの人数でどのくらいの日数がかかったのでしょうか。この独特の重厚感をかもしだす雰囲気は、この天井板すべてに描かれた手描きのなせる業が生み出していたのでした。

背面(祭壇側)からみた黒島天主堂

  刷毛目仕上げの板は、天井板と開口部の扉すべてに使用されています。どれだけの人数でどのくらいの日数がかかったのでしょうか。この独特の重厚感をかもしだす雰囲気は、この天井板すべてに描かれた手描きのなせる業が生み出していたのでした。

参考文献
  • 「旅する長崎学6 キリシタン文化編 別冊総集編」 企画/長崎県 制作/長崎文献社  p.22 発見コラム カトリック信者の島 黒島 2007年
  • 「長崎游学2 長崎・天草の教会と巡礼地完全ガイド」 監修/カトリック長崎大司教区 編/長崎文献社 2005年
  • 「信仰告白125周年 黒島教会の歩み」 発行/黒島カトリック教会 1990年
  • 長崎県 長崎から世界遺産を「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」黒島天主堂
★いざ、黒島へ!
黒島港

R佐世保駅から松浦鉄道に乗り換えます。[伊万里][佐々」[たびら平戸口]行きに乗車し、約30分で<相浦駅>に到着。
相浦駅を降りて蛭子川に架かる港橋を渡って相浦桟橋へ。黒島旅客船のフェリーに乗って約50分です。 (1日3便の運行ですので、帰りの時間を確認しましょう。また、季節によって運行ダイヤの変更がありますのでご注意を!)

ながさき歴史散歩 第3回 「世界遺産候補を巡る旅 平戸&外海編 〜キリシタンゆかりの里を訪ねて〜」もあわせてご覧下さい。



うんちくバンク

人物
  • 黒島天主堂をつくったマルマン神父
  • ペルー
  • 堂崎教会建築を指導したペルー神父
  • マルマン神父
歴史事件
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      • 大浦天主堂
      • 黒島天主堂
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      • 長崎巡礼センター
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