たびながコラム

ホーム   >  たびながコラム  >   近代化に向けて

ドラマティック・ファミリー

ドラマティック・ファミリー

有島 武(ありしま たけし)
1842年〜1916年 鹿児島県出身 官僚・実業家

出身地・鹿児島県薩摩川内名産はれいし(にがうり)、らっきょう、ごぼう

 今回紹介する有島武は、明治時代、大蔵省書記官、日本鉄道専務など、様々なジャンルで活躍した人ばい。なんと、この人は、日本文学界に大きな足跡ば残した有島武郎(ありしま たけお)、里見(さとみ とん)、そして画家の有島生馬(ありしま いくま)のお父さんで、さらに昭和前半の映画界で活躍した俳優・森雅之(もり まさゆき)のお祖父さんにあたる。有島家ってすごかね。こがんたくさんの有名人が出とっとも珍しかっちゃなか?

 有島武は薩摩藩士・有島宇兵衛の長男として、現在の鹿児島県の薩摩川内市に生まれた。父親は島津家の分家の重臣やったとけど、お家騒動に巻き込まれて、琉球(沖縄)の小さか島に流されてしもうた。そいで武は、14、5歳頃までお祖父ちゃんの手で育てられたとって。ひとりっ子で兄弟もおらんやったけん、寂しい子ども時代ば過ごしたらしかよ。
 長崎に来たとは1860年(万延1)、19歳の時。残念ながら長崎遊学時代の資料はあんまし残っとらんとけど、一説によると、同じ頃に長崎で遊学しよった小松帯刀(こまつ たてわき)に同行して来たんじゃなかかという説もあるとよ。いずれにしても小さい時から努力家やった武は、長崎で習うた砲学の勉強ば江戸へ移っても続けとった。

有島家の7人の子どもたち。この中からぞくぞくと有名人が・・・

 武は、子どもんときの寂しか生い立ちに加えて、何回も人に騙されたとって。裏切りば何回も受けたせいか、人をあんまり信用できんようになったらしか。でも、三度目の結婚で初めて生涯の伴侶となる幸(南部藩士の娘)と結ばれたと。幸もまたいろいろと苦労した人やったけん、苦労人同士が結ばれて、二人の人生は良かごとなっていったとやろか。結婚ば機に、武は仕事に邁進していったとよ。維新後の新政府では大蔵省に勤務。結婚直後には関税局書記官に昇進しなって、アメリカやイギリス、ドイツに出張したりもした。幸は武を助け、良か妻として暮らしたげな。
 さて、武と幸には女の子2人と男の子5人が生まれ、合計7人の子福者になった。そのうち、長男が作家・有島武郎、次男が画家・生馬、四男が作家・里見というわけ!それぞれが日本の文学史や画壇に、大きな足跡ば残しなった人たちやけん、すごか家族やね。

長男・武朗が受けたスパルタ教育、武術に馬術にテーブルマナー

 武は武家の出やったし、当時の時代背景もあってか、長男の武郎に対してそれはそれは厳しいスパルタ教育ばしたとって。有島家の長男として恥ずかしくなかごと育てんばという親心やったと思うばってん、西洋風の食事のマナーから礼儀作法、武術、馬術、外国語教育などなど。他の兄弟たちはけっこう伸び伸びと育ったらしかけど、武郎だけは違うとった。武郎は相当辛か毎日ば送っとったらしかよ。作家で成功するくらいの感受性ば持っとった武郎のことやっけんが、もちろん父親である武への尊敬の念もある反面、自分と他の兄弟に課せられていることの違いや厳しさへの反発っていうか、大きな葛藤もあったとじゃなかろうか。武郎が抱いたこの葛藤に、武が気づいとったかどうかはようわからん。でも、優秀やった武郎が大正天皇のご学友として、同席するようとのお達しがあった時には、えらい喜んだらしかよ。

こんな勉強も・・・砲術たい。

 武は1893年(明治26年)に官僚から退いて、実業家としてスタートした。そして日本郵船監査役、日本鉄道専務、十五銀行取締役などを歴任し、その後は東京の市会議員にもなったげな。苦労続きやった子ども時代を経て、文化・文明の聖地であった長崎に遊学。その知識を元にして勉強を続け、いわゆる立志伝の人となった有島武と、後世に名を残した子どもたち。まるでドラマのごたっ家族ばい。武は1916年(大正5)、75歳で亡くなった。皮肉なことばってん、「長男 有島武郎の文学者としての活躍は、この父の死を契機として始まった」という評論が多かごたるね。

じげにゃん

 官吏から実業家という極めて現実的な世界で成功した武から、子孫に流れた血脈は、不思議なほど芸樹的要素が強かよね。武の中にも実はそんなDNAがあったとかにゃー?。それとも奥さんの血筋かにゃー? いずれにしても、一家に有名人がいっぱいおってびっくりしたにゃ〜。

[原文:林すみこ / 切り貼り画:田中今日子]

参考文献
  • 『有島武郎 虚構と実像』内田満著(発行/有精堂)
  • 『悲劇の知識人 有島武郎』安川定男著(発行/新典社)
  • 『コンサイス人名事典』三省堂編集所(発行/三省堂)
  • 『作家の生成』山田俊治著(発行/小沢書店)
  • 『コンサイス人名事典』三省堂編集所(発行/三省堂)
  • 『鹿児島大百科事典』(発行/南日本新聞社)


アンケート

コメント