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五島八十八ヶ所霊場めぐり

五島八十八ヶ所霊場巡拝とは・・・

 「テーマで歩く歴史散策」(2009年12月9日更新)でご紹介したように、下五島は遣唐使ゆかりの地です。決死の覚悟で中国大陸をめざす遣唐使にとって日本最後の寄港地であり、また、唐の仏教文化や文物をたずさえての帰国の途において、最初に上陸する日本の地でもありました。弘法大師・空海も五島経由の航路で入唐・帰国したひとりで、唐で学んだ真言の教えを五島で最初に伝えたとされ、空海ゆかりの地や伝説などもいろいろと残っています。

 こうした歴史的背景もあって、1886年(明治19)に制定された五島八十八カ所への巡拝が、今ひそかなブームとなりクチコミで広がりつつあります。

 

 そこで、今回の歴史発見コラムでは「五島八十八ヶ所霊場巡拝」をご紹介!

 八十八ヶ所のスタート、1番・2番・4番目に選定されている明星院(みょうじょういん)と、ゴールの87番・88番目となる大宝寺(だいほうじ)を訪ねてきました。

宝珠山吉祥寺 明星院(第1番、第2番、第4番)
  

 五島における真言宗の総本山で古い歴史を持ち、五島家代々の祈願寺でもあったといいます。806年(大同元)、空海が唐から帰朝する途中、この寺に参篭(さんろう)した際に見た、一条の喜ばしい光が差し込み、大変よい兆しと思い、「明星院」と進言したと言われています。

 現在の本堂は、五島藩第8代藩主の五島盛運(もりゆき)が、1778年(安永7)に火災にあった本堂を再建したもので、檜の芯柱20本を使用しており、五島最古の木造建築物となっています。

 

 注目は本堂の天井絵。狩野派に師事した藩の絵師・大坪永章の筆によるものです。鳥や花が描かれた総数121枚が美しく調和し、荘厳な雰囲気をかもし出しています。一枚一枚じっくり見ていくと、極楽鳥やオウムなど異国のものらしき図柄が描かれていることに気づきます。

 また、長押(なげし)の壁にかかっている華鬘(けまん)は1675年(延宝3)、富江領始祖・五島盛清(もりきよ)の寄進によるものだそうです。

 

 本堂に安置された本尊は「虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)」で、天竺(てんじく)仏と伝えられます。また、右脇立像は弘法大師作と伝わる「地蔵菩薩(じぞうぼさつ)」、左脇立像は「阿弥陀如来像」です。木造阿弥陀如来立像は、阿弥陀如来信仰が盛んだった平安後期から鎌倉時代にかけて多く造られました。明星院の阿弥陀如来像はほどよい円みを帯び、目鼻や唇の彫りも丁寧に仕上げられており、いかにも平安後期の特徴であるおだやかな雰囲気をもっています。

 また、明星院に安置される秘仏「銅造薬師如来立像」は、奈良時代の製作といわれます。左手先と光背を失っていますが、優しく慈悲あふれる表情を見せているそうです。九州には、大分柞原(ゆすはら)八幡にこの種の一体がありますが、全国的にみても極めて貴重な文化財です。

天井画。見とれて首を痛めないように・・・。 護摩堂(88番中2番にあたります) 盛運の八女にまつわる宝塔
▲天井画。見とれて首を痛めないように・・・。 ▲護摩堂(88番中2番にあたります) ▲盛運の八女にまつわる宝塔
三尊石組(さんぞんいわぐみ) 宝珠山吉祥寺 明星院 宝珠山吉祥寺 明星院

▲三尊石組(さんぞんいわぐみ)/三個の石を三角形に組み、薬師三尊にたとえている。真ん中の石を薬師如来、脇の二つの石を日光菩薩と月光菩薩に見立てている。


 明星院周辺は見応えがあり、散策しているとつい時間を忘れてしまいます。なお、4番の明星院行者堂は、山手側にまわったところにあります。明星院に見られる貴重な品々は、中国大陸へと向かう“海の道”に位置する下五島の文化の厚みを物語っています。

 

拝観時間:9:00〜12:00、13:00〜17:00(毎月1日、28日はお休みです)

問合せ先:TEL:0959-72-2278

大宝寺(だいほうじ)(第87番、第88番)
第八十八番大宝寺 第八十七番大宝寺護摩堂
(左)第八十八番大宝寺 (右)第八十七番大宝寺護摩堂

 むかし、西天竺(印夏)のマガダ国より不須仙人がやって来て、エンダゴンという金属で鋳造された聖観音像を奉持し、玉之浦・笹海(さざめ)の小高い丘に祀って「観音院」と称したことが伝わります。この聖観音像は、信濃の善光寺、東京浅草の観音とともに日本三大秘仏のひとつといわれています。

 その後、701年(大宝元)、震旦(しんたん・中国)の道融和尚が三輪宗を広めるために来日し、最初に玉之浦・大宝の浜に上陸しました。白砂青松の浜を前にし、緑繁る弥勒山を背後とする地を選び、笹海の観音院を遷して三輪宗の寺院を建て、これを「大宝寺」としました。その後、第41代持統天皇(じとうてんのう)の勅願寺となりました。

 806年(大同元)、唐より帰朝した空海が大宝の浜に上陸し、しばらく大宝寺に滞在した際に、三輪宗から真言宗に改宗させたことから、「西の高野山」ともよばれています。空海が真言密教を初めて日本で伝えた地といわれ、唐の文化の入口ともなった島に、太古の浪漫を感じずにはいられません。

 また、大宝寺には、最澄が自ら掘ったといわれる十一面観音が収蔵されています。この十一面観音は、最澄が遣唐使船に乗って唐へ渡る前に航海安全を祈願した「白鳥神社」に、無事の帰朝のお礼として、810〜823年(弘仁年中)頃に奉納したものといわれています。

第八十八番大宝寺 第八十八番大宝寺 第八十八番大宝寺
五島八十八ヶ所霊場巡拝の八十八番目とあって、見応えも十分です。

第八十八番大宝寺 第八十八番大宝寺 第八十八番大宝寺 第八十八番大宝寺

見学は自由です。ガイドを要望される場合は、事前に連絡が必要です。 

問合せ先:TEL:0959-87-2471 

 「五島八十八ヶ所霊場巡拝」は、四国の八十八ヶ所巡りとくらべると、小さくこじんまりとした地蔵堂や観音堂が多いという印象を受けるかもしれません。しかしながら、誰でも受け入れてくれそうな、この素朴さに安らぎと癒しを求める巡拝者が増えつつあるようです。中国大陸へ向かう遣唐使にとって、日本の“最後の地”であり“最初の地”でもあった五島。決して華やかさや賑やかさはありませんが、彼らの想いや祈願を受けとめた豊かな自然を肌で感じる、贅沢な旅となることでしょう。

 八十八ヶ所すべてを巡るには、朝から夕方までタクシーで移動しても、最低3日間は必要だそうです。もちろん短期集中型の巡拝者もおられますが、定期的に訪れて五島をゆっくり満喫しながら、少しずつ分けて巡拝する方も少なくないということです。毎年マイペースで巡拝の旅に出かけ、自分自身を癒す時間を持つというスタイル・・・。毎日がめまぐるしく忙しい現代、こんな旅もいかがでしょうか。

五島八十八ヶ所霊場巡拝をされる方へ

 福江港ターミナルビル内にある「五島市観光協会」では、巡拝案内ガイドと『納経帳』などを販売しています。

 島内の移動に関しては、観光タクシーなどを利用して巡拝することもできます。詳細は、五島市観光協会へお問い合わせください。
 

五島市観光協会

TEL:0959-72-2083

http://www.gotokanko.jp/

参考資料
  • 『福江市史(上巻)』『福江市史(下巻)』(平成7年3月31日発行)
  • 『玉之浦町郷土誌』(平成7年3月31日発行)
  • 『五島八十八ヶ所霊場巡拝案内』(五島市観光協会発行)


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