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浦上そぼろを作ろう!

−キリシタン文化が生んだ郷土料理−

 キリシタンの里「浦上村」で、ポルトガル人の宣教師は信徒たちに"肉を食べる"という習慣を伝えました。 それを知った村の人たちは、長崎人の味に合うように豚肉を油炒めにした料理「浦上そぼろ」をつくったようです。 「そぼろ」とは方言で千切りの油炒めのこと。 母から子へと代々受け継がれた家庭の味となって、長崎っ子に親しまれている郷土料理となりました。

 そういえば、「浦上そぼろ」は、長崎の学校給食の献立にも登場します。 小学生のころ、「どうして"浦上そぼろ"って言うんだろう?」と、疑問に思いながら給食を食べていた記憶がよみがえりました。 「懐かしい!」という声も聞こえてきそうですね。

 さて、浦上そぼろは豚肉を使いますが、日本ではいつ頃からお肉を食べる習慣があったのでしょう?

 豚肉好きの人物として、江戸幕府の最後の将軍・徳川慶喜は有名です。 ニックネームは「豚一さま」。 すこぶる豚肉が大好きだったことから呼ばれたあだ名ですが、慶喜が豚肉を食べていたのは江戸末期。 一般的に広く庶民の口に入るようなったのは明治維新後の19世紀後半のことだそうです。

 もともと豚肉は唐船によって日本に持ち込まれ、豚の飼育が始まったのは室町時代からです。 日本人は全くお肉を食べなかったのではなく、一般庶民にはなかなか口にするのは難しく、お肉を食べるという習慣が根付きませんでした。

 しかし、南蛮船がやってきた16世紀頃から、異文化到来の影響で日本人の食の習慣も少しずつ変化していきます。 当時の手紙や日記に記されたお肉の記述を、ちょっとピックアップしてみましょう。

 平戸では、1559年ポルトガル人の司祭バルタザール・ガーゴの手紙の中に、信者から豚肉(たぶん塩漬けの豚)を貰ったという1文があります。 また13年後の1612年、イギリス商館ジョン・セーリスの日記には、平戸で豚の飼育と食用肉の販売がおこなわれていた様子が書かれています。

 長崎では、ポルトガル船が港に停泊していた1600年代の初め、教会が建ち並ぶ長崎の町にはパンを焼く人、牛肉をさばく人、中国から持ち込まれた野菜や鶏など、海外の食文化が集まり、活気に満ち溢れていました。 きっと南蛮料理の美味しそうなにおいが漂っていたことでしょう。 さらに時は江戸へと移り、長崎代官 高木氏の頃、津山藩(現在の岡山)の蘭学者の箕作阮甫(みつくり げんぽ 1799-1863)が嘉永6年(1853)に長崎を訪れました。 その時の日記に、「さすが長崎の豚肉は江戸の豚肉とは大いに異なり美味にて柔らかなり。 …中国・オランダ人のために豚を土地の人々が長年飼育につとめたからであろう。」と書かれています。 この時、阮甫は「ソボロ烹を食べたい」とも話したそうです。

 地域の歴史を背景に持つ郷土料理。 さてお味の方はどうでしょうか!? さっそくチャレンジしてみましょう!

材料:2人前

豚肉 (薄切りのバラ肉) 20g

揚げかまぼこ 1/7枚 (10g)

糸こんにゃく 1/4袋 (40g)

もやし 1/4袋 (50g)

ニンジン 1/6本 (20g)

ゴボウ 1/10本 (30g)

油 少々 (0.6g)

濃口しょうゆ 小さじ2/3 (4g)

砂糖 小さじ1 (2.8g)

みりん 少々 (1g)

酒 少々

塩 少々

白ゴマ 少々

作り方

(1)料理の下ごしらえをしましょう。

ニンジンは長さ約3〜4僂寮蘋擇蝓F撻丱蘰・揚げかまぼこも千切りにします。 食べやすい長さに切った糸こんにゃく・ささがきにしたゴボウ・もやしは、熱湯にひとつまみの塩を加えて軽く茹で、ザルにあげて水気を切ります。

(2)材料を炒めましょう。

 鍋に油を入れて熱します。 豚バラ肉を先に入れ、ゴボウ・ニンジン・糸こんにゃく・揚げかまぼこ・もやしと、煮えにくい順番に炒めます。

(3)味付けをしましょう。

濃口しょうゆ・砂糖・酒・みりんを加えてさっと煮ます。 お好みで味をととのえましょう。

(4)盛り付けて完成です!

器に盛り付けたら、白ゴマをパラパラと散らしてできあがり。

もやしとゴボウの香りがたまりません!

さぁ、いただきます!

★調理のポイント★
  1. もやしはシャキシャキっとした食感を残しましょう。
    もやしは、中世のころ、中国から長崎へとやってきました。 もやしは長崎料理に欠かせない野菜です。たっぷり使いましょう。 下ごしらえ(1)で一度茹でると野菜のアクがとれて、炒めるときに余分な水分がでません。 また、調理の最後に火を止めてごま油を加えてもおいしいですよ。 おためしあれ! 浦上そぼろは、やっぱり西洋と東洋の文化がミックスされた長崎のオリジナル料理なんですね。
  2. 海外との貿易で砂糖が輸入されていた歴史の背景から、長崎の味はやや甘め。 惜しみなく砂糖を使ったふくよかな味わいが、長崎のもてなしの料理です。 浦上村では人びとが集まるときに、この浦上そぼろをつくっていたそうで、そのおいしさが話題にのぼったようです。

 伝えられてきた郷土の味と手料理のもてなしの気持ちを大切にしたいなと思いながら、できあがった「浦上そぼろ」をみんなで美味しくいただきました。 ごちそうさま!!

参考文献
  • 長崎県教育庁体育保健科「長崎の郷土料理(学校給食レシピ)HP
  • 長崎県栄養士会
  • 「長崎の西洋料理-洋食のあけぼの-」 著者/越中哲也 発行/第一法規出版 1982年
  • 「長崎学・續々食の文化史-食文化をたずねて-」著者/越中哲也 発行/長崎純心大学博物館 2002年
  • 「長崎市史 風俗編」 著者/古賀十二郎
  • 「徳川慶喜家の食卓」 著者/徳川慶朝 発行/文藝春秋 2005年


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