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島グルメ

〜対馬編〜

 長崎県の「対馬(つしま)」をご存知ですか?朝鮮半島と九州のあいだに浮かぶ島。韓国の釜山からわずか49.5kmの距離に位置する国境の島。南北82km、東西18km、面積約708平方キロメートルと日本で3番目に大きい島。

 朝鮮半島や中国大陸の影響を受けながら、昔から朝鮮半島と交流してきた対馬には、独特の自然、歴史、食文化などがあります。今回は、対馬に伝わる自慢の郷土料理を紹介します。

「石焼(いしやき)」と「対州(たいしゅう)そば」

 対馬の有名な郷土料理に「石焼」と「対州そば」があります。

 石焼はもともと対馬の漁師が浜辺で捕ったばかりの魚や貝を、たき火に入れた石の上で焼いたことから生まれました。普通なら刺身で食べられるほど新鮮な魚介類や季節の野菜を、石英班岩(せきえいはんがん)の上でジュージュー焼いて食べます。


 そばは縄文時代の終わりに中国から朝鮮半島を経て日本の対馬に初めて伝えられたといわれます。対馬には平野が少なく稲作がほとんどできなかったので、山の斜面を利用してそばが栽培されていました。大自然の中で育った対州そばは香りがよくコシもあり、そば本来の素朴かつ豊かな風味が特徴。麺はツルツルとのど越しよくいただけます。

「いりやき」と「ろくべえ」と「かじめの味噌汁

 対馬の人々が好んで食べる料理に「いりやき」と「ろくべえ」と「かじめの味噌汁」があります。

 いりやきは対馬の鍋料理の代表です。だし汁は甘めで、旬の魚ベースと地鶏ベースの2種類の鍋があります。地元のルールとしては魚と地鶏を一緒に入れることはないそうです。宴会などでは魚好きと鶏好きに分かれて鍋を囲むということでした。

 「ろくべえ」は芋(甘藷)を手間ひまかけて加工し、粉状にして乾燥保存した「せんだんご」をうどん状にして煮込んだものです。せんだんごの製法は中国の福建省にも分布しているといわれています。せんだんごをうどん状にしたものは、つなぎがないので普通の麺に比べて、ぶつぶつ切れて短くなっています。

 ちなみに、「いりやき」や「ろくべえ」の名前に由来は諸説あり、はっきりしないようです。


 ところで、地元の人々が家庭で食べる定番の朝食といえば、かじめの味噌汁。かじめは独特のとろみがある海藻の一種で、対馬の家庭ではよく温かいごはんにかじめの味噌汁とイカをおかずにして一緒に食べるそうです。就職や進学などで島外に出た人々が、まず懐かしむ島の味が磯の香り豊かなかじめの味噌汁だといわれています。

「蜂蜜(はちみつ)」と「しいたけ」

 山深い対馬には、高品質の特産品として有名な「蜂蜜」と「しいたけ」があります。

 対馬特有の気候と風土がもたらしてくれる対馬産の蜂蜜は全国に知られる高級品。民家近くの山林には、蜜蜂と巣を集める「はちどう」がたくさん設置されています。9月下旬、はちどうから巣を取り出し、手前の巣を削って取ると、黄金色の甘い蜜がじわっとしたたり落ちます。その蜜を布でこして瓶づめにしていくそうです。対馬の蜂蜜はニホンミツバチの巣から採れる貴重なものですが、ニホンミツバチには一カ所ではなくあちこちを放浪しながら時間をかけて蜜を集める習性があるため、様々な種類の花の蜜が混ざりあい、独特の色合いと風味に特徴があるそうです。しかもミネラルなど様々な成分が含まれ、栄養もたっぷり。採れたての蜜をなめてみると、濃厚な甘さですが甘ったるさは残りませんでした。

 さて、山の幸をもうひとつ。対馬では、山の斜面と原木を利用した自然ほだばでしいたけづくりがおこなわれます。良いしいたけを栽培する条件は、日差しが当たらないことと原木そのものにいいものを使うこと。原木は切ったものを乾燥させて使います。11月中旬から3月にかけて採れるのは肉厚が特徴のどんこしいたけです。原木しいたけは肥料や農薬をまったく含まず、水分と木の養分のみで育ちます。そのため臭みがほとんどありません。生しいたけのおいしい食べ方は、炭火でそのまま焼いて藻塩や醤油を少しふりかけるだけです。地元では「森のアワビ」とよばれます。


 みなさん、対馬の風土が生んだ豊かな食文化の数々、いかがでしたか?対馬にお立ち寄りの際には、歴史散策の合間に、ぜひ対馬自慢の郷土料理を味わってみてくださいね。

[文:小川内清孝]

参考文献
  • 『長崎県文化百選 壱岐・対馬編』(企画/長崎県 制作/長崎新聞社)


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