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大村寿司(おおむらずし)

 長崎県内の名物料理をご紹介します。今回は、長崎県の中央部に位置する大村市の郷土料理「大村寿司」ですよ。

大村寿司の歴史

 今から500年ほど前の戦国時代の頃のお話。

1474年(文明6)、大村領主・大村純伊(すみこれ)は、島原の有馬貴純(ありまたかずみ)に攻められ、中岳城の合戦において敗れました。唐津の沖合いにある加々良島(佐賀県)へ逃れ、それから長いあいだ領地奪還を狙っていた純伊は、渋江氏らの援軍を得て、ようやく大村に帰還することができました。

大村の領民たちは喜んで純伊を迎えいれましたが、急だったために、ご馳走を作ってもてなすことができません。そこで、即席で“もろぶた(木製の長方形の箱)”に炊きたてのご飯を広げ、その上に魚の切り身や野菜のみじん切りなどを載せて軽くおさえたものを、純伊や将兵たちへ差し出しました。将兵たちは脇差を抜いてこれを適当に角切りにして食べたといいます。

これが大村寿司の起源ともいわれ、500年以上もの長いあいだ地元の人々に愛され、歴史的な郷土料理として今に受け継がれています。大村純伊にちなみ、「殿さま寿司」という名でも親しまれています。

 大村寿司づくりの長い歴史を持つ「大村角ずし やまと」の4代目・永田喜美男さんにお話を伺いました。

大村寿司の作り方

 見た目も華やかな大村寿司、どういう手順で作られているのでしょうか?

 実際に大村寿司を作っているところを見せていただきました。

1.もろぶたに合わせ酢を均等に塗ります。

 *この合わせ酢は味付けにも重要で、「大村角ずし やまと」オリジナルのものを使っているそうです。

2.酢飯を均等に広げていきます。

3.その上に奈良漬、さきがけごぼうを載せていきます。その上にまた酢飯を広げます。

4.干しシイタケやかんぴょう、緑やピンク色のはんぺんなど味付けされた具材を均等に広げていきます。これらの具材をバランス良く広げるのが意外と難しいそうです。

5.錦糸卵を載せます。表面を覆うように広げていくと、彩りもあざやか。上から軽く合わせ酢をかけます。

6.最後に上から型を押し、均等に切ります。もろぶたをはずして、完成です。

 

※寿司の具材の準備は説明から省いています。

近年の大村寿司

 大村寿司は領民たちの手で受け継がれました。西洋からキリシタン文化が入ってきた時も、江戸時代に大村藩となってからも大村寿司は継承され、藩内各地で食べられてきました。旧大村藩領であった西海市では「西海寿司」という名で親しまれています。昭和初期頃までは、この大村寿司を作るための“もろぶた”は嫁入り道具のひとつだったと聞きました。また地域によって具材が多少異なり、魚の身や野菜を入れたりすることもあるそうです。

 「その日の早いうちに食べるのであれば、魚を入れても大丈夫です。昔は魚を入れていたけど日持ちしないため、テイクアウトには適しないですね。シイタケやかんぴょうなど保存できる乾物で、時間をかけて火を通せる具材が昔から選ばれています。そもそも家にある具材を使って作られており、各家庭によってそれぞれの味があったようです。強いて言えば錦糸卵は必須ですが、この具材が大村寿司であるという決まりごとはありません。たとえば子どもたちがもっと好んで食べてくれるように、お子様向けの具材を入れたりするのもいいのではないかと思います。」

 

さて、気になるお味は?

 初めて大村寿司を食べた人は、“甘い”と言うそうです。“寿司”という名がついていることもあり、先入観で醤油をつけて食べる方もいらっしゃるようですが、しっかり味がついているので、醤油はいりません。

 「大村寿司が甘いのは、砂糖が使われているからです。農作業など家族や親戚が共に労働をした後に、みんなでご馳走として食べることが多かったので、体の疲れをとるために砂糖を入れ、甘くしたのではないかともいわれています。」

 長崎港が開港しておこなわれた南蛮貿易により、早くから砂糖が手に入っていた大村ならではかもしれませんね。

人と人を繋いできた大村寿司

 とってもいい香りに誘われて、735円の角ずし弁当を買っていただきました。甘い酢飯が口に広がり、すごく優しい味でした。小さい頃によく食べた懐かしさと同時に、お祝いなどの時に近所のみんなが集まって大村寿司を食べたことを思い出しました。(筆者の実家は旧大村藩領です)

 今回の取材で、「大村寿司は、昔から人と人とを繋ぐような役割を持っていたと思います。」という言葉が印象に残りました。

 大村寿司は、家族や親戚、近所の人たちなど大人数で集まって食べるご馳走として特別なものでした。そういうことから大切な方へのお土産としても喜ばれており、また郷土の味が懐かしくて食べにくる大村出身の方も多いそうです。

やはり大村寿司には、人と人とを繋ぐ力があるのだと思います。500年以上も続く郷土料理ゆえのパワーなのでしょう。

 

 みなさんも、ぜひ長崎県自慢の味、「大村寿司」を食べに来ませんか! 時間がない方は、長崎空港でも販売されていますので、長崎旅行の締めとして機内で召し上がるのもいいかも。

大村角ずし やまと

長崎県大村市本町474-5

TEL:0957-52-3546

 

 「大村角ずし やまと」の前を流れる内田川は古くからたくさんの船が停泊し、荷物の積み下ろしをしていたといいます。そこで働く人たち向けに、大村寿司を作って最初に販売を始めたのが「大村角ずし やまと」でした。

 

関連URL:http://www.kakuzushi.jp/


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