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7月24日通りのクリスマス

 長崎出身の作家・吉田修一さんの小説「7月24日通り」を原作とした映画「7月24日通りのクリスマス」が2006年(平成18)に公開されました。

 この映画は、大沢たかおさんと中谷美紀さんのW主演で話題となり、ポルトガルのリスボンと長崎市を中心にロケが行われました。

 中谷美紀さん演じる長崎市に住むOLが、幼い頃から読んでいる少女漫画の影響を受け、頭の中で長崎の街をポルトガルのリスボンの街に置きかえて毎日を過ごしています。が、街の風景を、近年の長崎を題材にした映画にはない見せ方で撮影しているのが特徴で、面白いところです。

 16世紀には、平戸で南蛮貿易が始まり、宮の前事件をきっかけとして貿易港は、横瀬浦(現西海市)に移ります。そして横瀬浦の焼き討ち事件後、港は一度は平戸に戻りますが、その後福田へと移ります。しかし松浦氏のポルトガル船襲撃などもあり、当時の領主・大村純忠(すみただ)は、1570年(永禄13)に長崎を新たな貿易港として開港します。

 長崎の開港とともに、新しい町が整備され、教会をはじめ学校や福祉施設、病院などが建てられ、キリシタンや商人も多く移住し、賑わう長崎はさながら「小ローマ」のような街になりました。

 

 映画の中で、主人公が浜町を歩いていたかと思うと、リスボンの街の中に変わっていたり、リスボンで路面電車に乗っているシーンから、長崎を走っている路面電車のシーンに変わっていたりというように、背景が主人公の心象に合わせて面白いように変わります。このような撮影・見せ方をされると、「長崎の街」と「リスボンの街」はすごく似ていると感じずにはいられません。

 長崎とリスボン・・・。港町で、坂道が多く、必ず海が見え、路面電車が当たり前のように道路を走っていて、周りの風景になじんでいる感じ。初めてこの映画で観たリスボンの街なのに、すでに知っているような感覚に出くわします。

 

 長崎を開港して町をつくり始めた頃、教会など施設を建てる際にきっとポルトガル人宣教師の指導もあったでしょうし、南蛮貿易にやってきたポルトガルやスペインの船員たちもしばらくの間は長崎の町に滞在していたでしょう。異国の空気感が漂う町だったに違いありません。

 南蛮文化研究の第一人者・故松田毅一氏は、天正少年遣欧使節の足跡を追ってマカオ、マラッカ、ゴア、ヨーロッパへと旅をし、ポルトガル人が開いた港には共通点があるといっていました。母国リスボンの港と同じように、狭い湾の奥の突き出た丘があるところに港をつくっているという点で似ているのかもしれません。長崎の港もそういうロケーションでした。

 歴史的に見ても、2つの街の風景が似ているというのは、とても興味深いですね。

 

 この映画の中には、オランダ坂や眼鏡橋、グラバー園などがさりげなく風景に映りこんでいます。南蛮貿易の歴史に思いを馳せながら、一時は共に栄えたポルトガルのリスボンとイメージを重ね、絵的に長崎を楽しむというのも面白いかもしれません。

 ちなみに、このタイトルの「7月24日通り」は、リスボンに実在する通りです。しかし「長崎西通り」という電停はこの映画で設定されたものです。長崎市を訪問した際には、ぜひ「長崎西通り」電停が実際はどこなのかを探してみませんか?



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