ながさき歴史の旅

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ながさき歴史散歩

第6回 世界遺産候補を巡る旅 上五島編

小さな漁港が長崎のルーツ!?
旧野首教会ステンドガラス

 「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が世界遺産の候補となりました。長崎におけるキリスト教の歴史は、伝来、繁栄、禁教、弾圧のあと、長い潜伏を経て奇跡の復活を遂げ、その後各地に教会が建てられ、いまに続いています。この世界宗教史上まれにみる激動の歴史と、厳しい迫害の中で何代にもわたって受け継がれてきた篤い信仰の姿を、いまもなお現存する教会や史跡の数々が物語っています。現在、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」には、県内各地に残るキリシタンの歴史を物語る文化遺産のなかでも、代表的な史跡や教会が構成資産として、県内20箇所がピックアップされています。

 このウェブサイト「旅する長崎学<<たびなが>>」では、この20箇所を「平戸&外海編」「長崎市街&島原編」「下五島編」「上五島編」と、4編に分けてご紹介します。長崎のキリシタンの歴史を旅してそのすばらしさと価値を体感すると、これらの“長崎のたからもの”をずっと大切にして、世界中の人にも知ってほしいと思わずにはいられません。今回は、「上五島編」です。このエリアに点在する貴重な教会と遺産を旅してきました。教会は祈りの場所ですから、マナーを守って見学させていただきましょう。

歴史のとびら

 長崎におけるキリスト教の歴史は、1550年、平戸に来航したフランシスコ・ザビエルの布教にはじまります。海外からやってきた宣教師たちの熱心な宣教活動と、南蛮貿易の利を得たい領主たちの思惑もはたらいて、キリシタンの数は増え続けますが、一転して受難の時代を迎えることになります。禁教下での弾圧による迫害、そして殉教・・・。1644年には日本国内にはひとりの神父もいなくなってしまいますが、キリシタンたちは先祖から伝えられた伝承やマリア信仰を心のよりどころに、潜伏しながらその教えを守り続けるのです。こうして受け継がれた篤い信仰は、約250年もの長い潜伏の時を経て、1865年、大浦天主堂を舞台に起こった「信徒発見」とよばれる信仰表明の感動的な瞬間へとつながり、日本キリシタンの復活は世界中に感動と衝撃を与えました。こののち、信仰の証として信徒たちの手によって建てられた教会は、まさに復活のシンボル的な存在となったことでしょう。長崎の自然環境とみごとに調和した幻想的で厳かな空間はもちろん、西洋と日本の技術が折り込まれた美しく独創的な意匠は、訪れる人々を魅了します。これらの遺産は450年以上もの歴史が育んだ結晶なのです。

 現在、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の構成資産としてピックアップされているのは20資産。そのうち教会が12件、キリスト教関連遺産は史跡など8件となっています。この長崎の“たから”を、次の世代へと大切に受け継ぎたい。2007年、長崎県は世界遺産の登録へ向けての大きな一歩を踏み出しました。

散歩コース

スタート地点までのアクセス

◎所要時間のめやす:1泊2日

1頭ヶ島天主堂

↓車で約40分

2青砂ヶ浦天主堂

↓有川港へ車で約20分+小値賀港へフェリーで約40分+町営船〔はまゆう〕35分+野崎港より徒歩20分

3旧野首教会

1頭ヶ島天主堂

キリシタンの楽園を夢見た石造りの教会

頭ヶ島天主堂1 頭ヶ島天主堂2

 五島列島のほぼ中央にある中通島を目指し、フェリーに乗って有川港に着きました。さらに東へとバスで移動し、小さな頭ヶ島へと到着。石造りというので、重厚で硬い感じの教会かと思っていましたが、実際に見ると、その外観は砂岩らしい柔らくて温かみのある教会でした。

頭ヶ島天主堂3

 とても信心深いドミンゴ森松次郎という人物がいました。信徒発見後、長崎でプチジャン神父の教えを受けた彼は、上五島の鯛ノ浦へ戻り、五島キリシタンの指導者となりました。幕末まで無人島だった頭ヶ島に神父をかくまうために移り住み、家に仮聖堂を置いて伝道士を養成しながら信仰を続けました。しかし、この島へも迫害が迫ったため、一時住民たちは脱出しますが、禁教令が解かれたあとに再び戻り、教会の建設にあたりました。最初、森松次郎の屋敷跡に木造の聖堂が建てられました(明治20年)が、その後、石造りの聖堂建設が始まります(明治43年)。これは、教会建築の父といわれる鉄川与助の設計・施工によるもの。島で産出する天然の砂岩を使ったという、全国にも数少ない切石積みの天主堂です。内部は白椿の花が繊細に表現されていて、石造りのどっしりした外観からは想像もつかないほど清楚で可憐な雰囲気。ハンマービーム架構で折りあげられた天井は、他の教会でも見る事が出来ない珍しいものです。工事は資金難などで一時中断したりしながらも、大正8年に現在の聖堂が完成しました。

 さぁ、湾に沿って、次の目的地・青砂ヶ浦天主堂に向かいましょう。

2青砂ヶ浦天主堂

アンジェラスの鐘が鳴り響く 丘の上の教会

青砂ヶ浦天主堂1 青砂ヶ浦天主堂2

 汗をかきながら教会の白い入口をくぐって扉を開く。瞬間にハッと息を飲みました。ステンドグラスから差し込む陽光が、あまりに美しく、万華鏡のような空間をつくりだしていたのです。目に映った光景を見た時、旅の疲れが肩からフーッと抜けていく感じがしました。

青砂ヶ浦天主堂3

 青砂ヶ浦に住む人たちのご先祖さまは、外海のかくれキリシタンだといわれています。現在の天主堂は3代目。建材は長崎県内各地から運ばれたそうで、木材は平戸島、石材は頭ヶ島、レンガは早岐から。八丁櫓の船を濃いで運び、子どもたちも一緒になって奉仕したといいます。

 奈摩湾を見下ろすように建ち、遠くからもよく見えます。

3旧野首教会

キビナゴ漁と共同生活が実った、海に向かって凛々しく建つ教会

旧野首教会

 西海国立公園に指定されている小値賀町野崎島へと町営船で渡りました。今はシカだけが住む無人島。ただ一人、旧野崎小学校を宿泊施設にした「自然学塾村」の管理人が住民票をおいています。白い砂浜と青い海がとてもきれいな野首海水浴場から、さらに歩いて5分。小高い丘の上にありました。海に向かって建つレンガ造りの教会です。

 凛々しい佇まいの影には、信徒の血のにじむ努力が隠されていました。明治2年、島民がキリシタンと発覚して迫害を受ける事件が起こります。平戸へ移送された人たちは、仏教への改宗を迫る苦しい拷問に耐え、やっとの思いで故郷へと帰ってきますが、この島で信徒たちを待ち構えていたのは、荒れた家と貧困でした。痩せた土地のため現金収入が少なく、共同生活をしながらキビナゴ漁でこつこつと蓄えを増やし、教会建設の発注までに30年以上もかかりました。あまりにも信者が貧しいわりには発注された教会が立派だったため、施工した大工たちは最後に自分たちが埋められるのではないかと心配したといいます。信仰の証として立派な教会を建てることが、信徒たちの願いであり、心血を捧げた努力の結晶なのではないでしょうか。

 今では無人となった島で、旧野首教会は貴重な宝として、小値賀国際音楽祭の会場などに活用されています。見学を希望するときは、事前に「おぢかアイランドツーリズム協会」(0959-56-2646)へ予約をしましょう。

 「世界遺産候補を巡る旅」4回シリーズの最後に訪れた旧野首教会を、名残り惜しい気持ちいっぱいであとにしました。長崎のキリシタンの歴史、そう、迫害も殉教も今の私たちにとっては実感のないものだなって思っていたけれど、今回の旅で、こうした目には見えない歴史を、カタチある姿として物語りながら後世に伝えている教会や史跡を巡って、本当に感動しました。

旅人コメント

「蒼い海を望む教会、殉教者の血の色を表すという椿模様。物悲しくも美しい。」(ヒロ)

参考文献

『旅する長崎学4 キリシタン文化4』
特集4-第4章 五島のキリシタンと信徒発見後の迫害

『旅する長崎学5 キリシタン文化5』
特集3-第2章 教会建築の第一人者 鉄川与助は仏教徒の棟梁
特集4 教会がある風景は長崎の歴史を語る文化遺産

『文化百選 五島編』
企画/長崎県 製作/長崎新聞社

長崎県の文化財
長崎から世界遺産を「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」

スタート地点までのアクセス

頭ヶ島天主堂

所在
長崎県南松浦郡新上五島町有川郷頭ヶ島(頭ヶ島)
お問い合わせ
鯛ノ浦教会 TEL/0959-42-0221
新上五島町観光協会 TEL/0959-52-4964
開館時間
鯛ノ浦教会へ要予約
休館日
なし
ミサ
第2・4日曜日16:00〜
駐車場
20台
アクセス
長崎からのアクセス…長崎港ターミナルより九州商船の「高速船(長崎-福江)」に乗船、中通島にある≪奈良尾≫で下船(所要時間は約1時間30分)。さらに奈良尾港より国道384号線を北上し車で約50分。バスの場合は、奈良尾港ターミナルより〔有川港〕行きに乗車し終点≪有川港ターミナル≫で下車(所要時間は約30分) 、〔頭ヶ島教教会〕に乗り換え≪頭ヶ島教会≫で下車(所用時間は約20分) 。
佐世保からのアクセス…佐世保港ターミナルより九州商船の「高速船( 佐世保-上五島)」に乗船、≪有川≫で下船(所要時間は約90分) 。または、「フェリーなみじ(佐世保-有川)」に乗船の場合は所要時間約2時間35分。さらに有川車港より約15分。バスの場合は、有川港ターミナルより〔頭ヶ島教教会〕行きに乗り換え≪頭ヶ島教会≫で下車(所用時間は約20分) 。
福岡からのアクセス…博多埠頭第2ターミナルより野母商船「太古」に乗船、≪青方≫で下船(所要時間は約6時間30分) 。さらに青方港より車で約10分。バスの場合は、青方港ターミナルより〔有川港〕行きに乗車、終点≪有川港ターミナル≫で下車(所用時間は約30分)。〔頭ヶ島教教会〕に乗り換え≪頭ヶ島教会≫で下車(所用時間は約20分)

● 長崎港ターミナル・佐世保港ターミナル・博多埠頭第2ターミナルまでのアクセスは「ながさき旅ねっと アクセス」をご覧ください。

五島を旅する前に!
教会見学は予約が必要な場合がありますから、事前に連絡しましょう。また、教会ではミサや冠婚葬祭がおこなわれますので、予約をしていても見学できないことがあることを心得ておきましょう。
海上タクシーや遊覧船を利用される場合は、事前に予約を入れる際に、旅のルートを相談してみましょう。
悪天候のためフェリーや高速船が運休になる場合があります。ゆとりをもって旅の計画をたてましょう。

うんちくバンク

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  • 頭ヶ島に移り住んだドミンゴ森松次郎
  • 鉄川与助
  • ペルー
  • マルマン神父
  • 宣教師と外科医の2つの顔を持つルイス・デ・アルメイダ
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