ながさき歴史の旅

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ながさき歴史散歩

第24回 伊王島 ぐるり!しま一周

〜キリシタン文化と近代化〜

歴史のとびら

 長崎港の沖合に、並んで浮かぶ伊王島と沖之島。2つのしまは橋で繋がり、美しい海に囲まれたロケーションからリゾートアイランドとして人気のスポットとなっていますが、キリシタン文化や近代化遺産の歴史散歩も楽しめます。青い空と海に映える教会の風景、外国船を長崎港へと導いた灯台など、今回は伊王島を歴史散歩します。

キリシタン文化

 伊王島におけるキリシタンの歴史は、徳川幕府の禁教政策(1614)によって、先祖からの伝承と信仰を守りながら厳しいキリシタン弾圧という時代を生き抜いたキリシタンたちが、天草などの各地から海を渡ってこの島にたどりついたのがはじまりといわれています。禁教時代には、役人の取り締まりの危険が迫ると一時的に船で避難しながら事態がおさまるまで耐えていたといわれています。
 幕末、ペリーの浦賀来航をきっかけに日本は世界5ヵ国と修好通商条約を締結(1858)しました。翌年には横浜・長崎・新潟・函館・神戸を開国。長崎では外国人専用の居留地が整備され、住宅、学校などの洋館と教会堂が建ち並びはじめました。245年もの時を経て、日本の地に再びキリスト教の宣教師が訪れるようになり、大浦天主堂で浦上村の信者が信徒であることを告白しました(信徒発見・1865年)。その後も浦上四番崩れなどの弾圧がおこなわれますが、1873年にようやくキリシタン禁制の高札が撤廃され、キリスト教は黙認されることになりました。各地に潜んでいた信徒たちは貧しいながらも喜びのうちに、信仰の証として自らの手で教会堂を建てていきます。伊王島にも大明寺教会、そして沖之島には馬込天主堂が完成しました。

近代化

 1866年(慶応2)、アメリカ・イギリス・オランダ・フランスの4カ国と結ばれた改税条約(江戸条約)により、日本各地に設置された8つの灯台のうちのひとつが伊王島灯台です。伊王島灯台が完成したのは江戸から明治へと変わった年の1868年(慶応4)のことです。明治新政府からの要請を受けて日本へやってきたイギリス人の灯台技師リチャード・ヘンリー・ブラントンが設計監督し、三菱長崎造船所の前身となる長崎製鉄所が工事に携わった日本初の鉄造六角形の洋式灯台です。隣には伊王島灯台を管理する吏員のために1877(明治10)に建てられた退職所があり、日本初の無筋コンクリート造りの洋館として県の有形文化財に指定されています。伊王島は昭和のはじめに炭鉱のまちとして栄えたしまでもあります。

 今回は、馬込教会、大明寺教会、伊王島灯台と記念館をめぐる伊王島の歴史散歩です。

散歩コース

スタート地点までのアクセス

◎所要時間のめやす:約1日

1馬込教会(沖之島教会)

↓徒歩で約30分 or車で約3分 + 徒歩で約7分

2大明寺教会

↓徒歩で約25分 or車で約3分 + 徒歩で約3分

3伊王島灯台

↓徒歩で約1分

4長崎市伊王島灯台記念館

1馬込教会(沖之島教会)

キリシタン念願の祈りの天主堂

 長崎港ターミナルから高速船に乗って出発です!
 約20分の快適な船旅で到着した伊王島は、リゾートアイランドとして人気のスポットです。

 長崎港の沖合に浮かぶ伊王島は、むかしもいまも長崎港を目指す船の目印。行き交う船の姿を眺めながら、南蛮船やオランダ船、唐船などが行き来した時代に思いを馳せました。

 さあ、桟橋から歩いて馬込教会へと向かいます。教会下行きのコミュニティバスもありますので、タイミングがよければご利用ください。

 馬込教会は、海に向かって建ち、丘の上にそびえるゴシック様式の教会堂です。
 信徒の坂田シズヱさんにお会いして、お話を伺いました。

 「教会堂を建設した頃の様子を、私の母からよく聞かされました。1家族から1人が工事の手伝いに行かされたそうです。教会堂の円柱は、海岸の砂を運んでつくったコンクリートの柱です。砂の粒子が粗くて、水をかけながらたわしで表面がツルツルになるまで磨いたのだそうです。ちょうど、入口の柱は磨く前の円柱です。砂粒が粗くでこぼこしていますでしょ。そして、内部の円柱は磨いた後です。みんなで力をあわせて教会堂を完成させたんです。」

 「それから、祭壇の上のステンドグラスとエントランスの上にあるバラ窓の3つをご覧ください。馬込教会堂は昭和20年に長崎市松山町上空で炸裂した原子爆弾の影響を受けました。海を越えて伊王島にまで迫った爆風で、ほとんどの窓が破壊されてしまいました。これらのステンドグラスは奇跡的に残った貴重な窓なのですよ。」

 坂田さん、貴重なお話をありがとうございました。

 次は大明寺教会に向かいましょう。

2大明寺教会

モダンな教会の背景にキリシタン文化の歴史あり

現在の大明寺教会

 <大明寺教会下>バス停から階段を登っていきます。大明寺の集落のほぼ中心に位置する坂の途中に、十字架の塔があるモダンな教会堂がみえてきました。

 実は、伊王島で初めて建てられた木造の旧大明寺教会があったのですが、現在、「博物館 明治村(愛知県犬山市)」に移築され、大切に保存されています。外観はどこにでもありそうな普通の日本家屋ですが、一歩なかに入るとその印象は一変します。白い漆喰と木造リヴ・ヴォールトの均整がとれた美しいプロポーションは、凛とした祈りの空間をつくりだし、見る人の心をひきつけます。教会建築の初期の作品として国の登録文化財になっています。

☆博物館明治村に移築された大明寺聖パウロ教会堂

 今度は、伊王島の近代化遺産をみていきましょう。

3伊王島灯台

岬から長崎航路を行き交う船の安全を守る

 大明寺教会から国道118号線を歩いて行きました。だんだんと傾斜がきつくなる坂をのぼり、灯台公園までの道のりを進みます。途中、伊王島海水浴場のコスタ・デル・ソルの浜辺が見えます。きれいに湾曲した砂浜と透き通る海の青さのコントラストがとても美しく、思わず写真におさめました。
 夏は海水浴客で賑わうビーチです。もちろん、夏の伊王島もオススメですよ。

 木の杭に書かれた<灯台入口>のバス停を目印に、さらに奥へと道を歩きました。

 やっと見えてきました! 白く輝く灯台と広がる海。

 この伊王島灯台は、慶応2年に幕府がアメリカなどの4ヶ国と結んだ改税条約(江戸条約)によって全国に設置された8つの灯台のうちのひとつです。日本の灯台の父と呼ばれるイギリスの技師リチャード・ヘンリー・ブラントンが設計監修し、三菱長崎造船所の前身となる長崎製鉄所が工事に携わって完成させた日本初の鉄造六角形の洋式灯台です。

 原子爆弾の爆風を受け改築されましたが、ドームの部分は当時のままの姿を残しています。

伊王島灯台と海
伊王島灯台
4長崎市伊王島灯台記念館(旧伊王島灯台旧吏員退息所)

日本ではじめて造られたコンクリートの洋館

 記念館となっている建物は、明治10年、灯台を管理する吏員のためにつくられた退息所(官舎)です。コンクリート一部木造の洋館建てで、日本初の無筋コンクリート造りとして、県の有形文化財に指定されています。

 記念館には、灯台に使われたレンズや灯台の模型などが展示されていて、灯台の歴史を知ることができますから、ぜひ見学しましょう。

灯台のレンズ
初代伊王島灯台の模型
太陽電池素子
灯台長室
記念館の窓越しにみえる伊王島灯台
旧吏員退職所便所棟
横からみた旧吏員退職所便所棟
灯台長専用のトイレ

 こちらの建物は便所棟となっていますが、水廻りをまとめた棟です。五右衛門風呂のある風呂場、そして灯台長専用とスタッフ用にわかれたトイレがありました。灯台長専用のトイレは個室で、便器はなんと陶器!! オドロキました! 

 右の写真はテラスからの眺めです。晴れた日は五島列島が見えるとか。この日は五島は見えなかったものの、小春日和の心地よい風が吹いていました。

 「旅する長崎学」を片手に歩く<ながさき歴史散歩>、"キリシタン文化"シリーズは今回で終了です。
 次回からは、日本近代化のさきがけとなった長崎県の姿を描く"近代化ものがたり"をテーマに、オススメの散策コースをご紹介してきます。お楽しみに!

参考文献
  • 「旅する長崎学5 キリシタン文化5」
    特集3-第1章 外国人宣教師が教会建築の先生
    企画/長崎県 制作/長崎文献社 2006年
  • 「長崎游学2 長崎・天草の教会と巡礼地完全ガイド」
    監修/カトリック長崎大司教区 編/長崎文献社 2005年
  • 「カトリック馬込教会 パンフレット」 制作/馬込教会

スタート地点までのアクセス

馬込教会(沖之島教会)

所在
長崎県長崎市伊王島2-617
お問い合わせ
095-898-2054
休み
平日の月~金曜
ミサ
要問合せ
駐車場
なし

アクセス

船…
長崎港ターミナルより長崎汽船の高速船[コバルトクイーン]に乗船し(所要時間は約20分)、伊王島港ターミナルで下船。国道118号線を左に曲がり栄橋を渡り徒歩で約13分。
車…
伊王島港ターミナルより約2分。
バス…
<伊王島港ターミナル前>より長崎市コミュニティバス伊王島線[沖之島教会]行きに乗り(所要時間は約5分)、<沖之島教会下>で下車し徒歩で約3分。

うんちくバンク

人物
  • ペリー
歴史事件
  • 浦上四番崩れ
資料
    場所
    • 伊王島灯台
    • 大浦天主堂
    • 大明寺教会
    • 長崎市伊王島灯台記念館(旧伊王島灯台旧吏員退息所)
    • 馬込教会(沖之島教会)
    その他
    • 伊王島ってどんなところ?
    • 教会見学のQ&A
    • 教会見学のマナー
    • 長崎製鉄所

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