ながさき歴史の旅

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ながさき歴史散歩

第3回 世界遺産候補を巡る旅 平戸&外海編

キリシタンゆかりの里を訪ねて
宝亀教会内部

 「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が世界遺産の候補となりました。長崎におけるキリスト教の歴史は、伝来、繁栄、禁教、弾圧のあと、長い潜伏を経て奇跡の復活を遂げ、その後各地に教会が建てられ、いまに続いています。この世界宗教史上まれにみる激動の歴史と、厳しい迫害の中で何代にもわたって受け継がれてきた篤い信仰の姿を、いまもなお現存する教会や史跡の数々が物語っています。現在、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」には、県内各地に残るキリシタンの歴史を物語る文化遺産のなかでも、代表的な史跡や教会が構成資産として、県内20箇所がピックアップされています。

 このウェブサイト「旅する長崎学<<たびなが>>」では、この20箇所を「平戸&外海編」「長崎市街&島原編」「五島編」と、3編に分けてご紹介します。長崎のキリシタンの歴史を旅してそのすばらしさと価値を体感すると、これらの“長崎のたからもの”をずっと大切にして、世界中の人にも知ってほしいと思わずにはいられません。今回は、「平戸&外海編」です。このエリアに点在する貴重な教会と遺産を旅してきました。教会は祈りの場所ですから、マナーを守って見学させていただきましょう。

歴史のとびら
 長崎におけるキリスト教の歴史は、1550年、平戸に来航したフランシスコ・ザビエルの布教にはじまります。海外からやってきた宣教師たちの熱心な宣教活動と、南蛮貿易の利を得たい領主たちの思惑もはたらいて、キリシタンの数は増え続けますが、一転して受難の時代を迎えることになります。禁教下での弾圧による迫害、そして殉教・・・。1644年には日本国内にはひとりの神父もいなくなってしまいますが、キリシタンたちは先祖から伝えられた伝承やマリア信仰を心のよりどころに、潜伏しながらその教えを守り続けるのです。こうして受け継がれた篤い信仰は、約250年もの長い潜伏の時を経て、1865年、大浦天主堂を舞台に起こった「信徒発見」とよばれる信仰表明の感動的な瞬間へとつながり、日本キリシタンの復活は世界中に感動と衝撃を与えました。こののち、信仰の証として信徒たちの手によって建てられた教会は、まさに復活のシンボル的な存在となったことでしょう。長崎の自然環境とみごとに調和した幻想的で厳かな空間はもちろん、西洋と日本の技術が折り込まれた美しく独創的な意匠は、訪れる人々を魅了します。これらの遺産は450年以上もの歴史が育んだ結晶なのです。

現在、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の構成資産としてピックアップされているのは20資産。そのうち教会が12件、キリスト教関連遺産は史跡など8件となっています。この長崎の“たから”を、次の世代へと大切に受け継ぎたい。2007年、長崎県は世界遺産の登録へ向けての大きな一歩を踏み出しました。

散歩コース

スタート地点までのアクセス

◎所要時間のめやす:1泊2日

1宝亀教会

↓車で約30分

2田平天主堂

↓車で相浦港まで約30分+フェリーで約50分+徒歩約20分(佐世保で1泊、相浦10:00発に乗船)

3黒島天主堂

↓相浦フェリー乗り場より車で約1時間30分

4大野教会

↓車で約10分 or 徒歩約1時間

5ド・ロ神父遺跡

↓徒歩約10秒

6旧出津救助院

↓徒歩約5分

7出津教会

1宝亀教会

赤レンガと白でふちどりが印象的、マタラ神父と信者が協力して建てた教会

 宝亀教会は、平戸の教会のなかでもっとも古く、側面にテラスをもつ珍しい設計。マタラ神父の指導のもと、木材や瓦を運び、白い漆喰の壁は、貝殻を拾い集めて焼いて丁寧に塗って完成させた教会。建設当初から変わらない輝きを放っているステンドグラスの美しさは格別です。信徒ひとりひとりの手で築き、大切にしてきた教会だと思うと、旅の興奮を抑えて静かに見学させてもらいました。
2田平天主堂

なにもないところからスタートした、荘厳なレンガ造りの教会

 パリ外国宣教会のラゲ神父(黒島教会)とド・ロ神父(出津教会)の2人が自費で購入した田平の地に、黒島や外海の信徒たちを移住させたのが最初だったそうです。 信徒たちはなにもない土地を開墾しながら生活の基盤を整え、仮聖堂もつくりました。入植してから約30年後に、信徒総出の労働奉仕によって建てられたのが、このレンガ造りの教会です。設計は、教会建築の第一人者である鉄川与助で、彼の名作と評される教会のひとつ。

 レンガの目詰めには信者たちが「ミナ」の貝殻を焼いてつくった石灰を使い、外壁部分の黒っぽいレンガは信者の家庭の鍋や釜のすすを油に混ぜて塗って色を出したと伝えられています。 信者の皆さんの手づくりのあとに、その苦労と思いを感じながら、静かに見学しましょう。

旅人コメント

 「教会の前には、貝殻のミナを焼いたというレンガの囲いが残っていましたよ。忘れずに見てください」(かえで)

 「先日、田平教会を訪れた時、雲の隙間からさす夕陽がとても神秘的だったので、思わずカメラを手に取り写真を撮りました。 しばらくその風景に見とれていました…。」(ケンケン)
3黒島天主堂

黒い瓦と赤レンガの教会、有田焼のタイルが聖なる祭壇を演出

 佐世保の相浦からフェリーに乗って黒島へ。人口約900人が住んでいる小さなしま“黒島”に建つ教会をめざします。この教会はフランス人のペルー神父が建てた木造レンガ造りの教会です。フランスから取り寄せた鐘やステンドグラスが当時のまま残っています。祭壇には有田焼のタイルが貼られていました。タイルに映る神秘的なステンドグラスの光に、おもわず吸い込まれそうでした。
4大野教会

ヨーロッパの片田舎を思わせる、石積みの素朴であたたかな教会

 大野のバス停から山手に向かってくねくねと小路を登った山間にひっそりと建っています。キリシタン禁制の高札が撤去されたとはいっても、まだキリスト教への偏見があった明治のはじめ、フランスから日本へとやってきたド・ロ神父が、私財を投じて信徒たちのために建てた教会です。ド・ロ神父独特の工法(石灰・赤土・砂を調合しモルタルとして使用)によって、信徒たちが大野岳の自然石を積み上げてつくったそうです。ローカルな建築様式だけに、絶対にほかでは見ることのできないものだから必見です。白い漆喰が塗られているところが入り口。教会の正面には、あたたかく見守ってくれるマリア像が建ち、眼下に広がる角力灘の蒼さが心を洗ってくれる・・・。そんな素晴らしい風景にも感激しました。
5ド・ロ神父遺跡(出津文化村)

外海の信徒に捧げた、ド・ロ神父の深い慈愛

  外海には「出津文化村」とよばれる一角があります。ここでは、崇高なキリスト精神と不屈のフロンティア精神で社会福祉事業に貢献したド・ロ神父の功績にふれることができます。

 現在はド・ロ神父記念館となっている鰯網工場跡のほか、ド・ロ神父が設計した出津教会、授産施設の旧出津救助院などを巡りましょう。貧しい村人の生活を高めるため、機械・網すき・染物・搾油・パン・マカロニ・ソーメン製法を教えたド・ロ神父の愛を感じることができます。印刷・出版事業、教会建築、開墾、道路工事、防波堤建築などの土木工事、社会福祉施設事業、医療・救護活動などなど、驚くほどに何事にも万能だったド・ロ神父は外海にとって救世主のような存在だったにちがいありません。 写真の白い建物がド・ロ神父記念館です。館内には、ド・ロ神父が使用した100年以上前のオルガンやメダイなど、ゆかりの品々が展示されています。

6旧出津救助院(出津文化村)

ド・ロ神父が考えた、女性たちが自活するために働く授産施設

  ド・ロ壁に沿って門を入りましょう。普通の民家に見えますが、ここは女性たちの自立支援をおこなった授産施設です。居留地に住む外国人たちに売る商品をたくさん作る工場のような感じ。1階は作業場、北側には窯のあるパン焼室、2階は裁縫のための部屋。パンやマカロニ、そうめん、機織、日本人にはまだ馴染みのない洋服を作って製品化していました。商品の商標は「至風舎」。ド・ロ神父は、こうした時代を先取りした技術のほかに、読み書きや算術も女性たちに教えたそうです。

旅人コメント

「遠藤周作記念館にあるレストランで、外海名物の「ド・ロさまそうめん」を食べました。フランス産の小麦粉と落花生油でつくられた、コシのある食感がたまらない! おいしかったです。」(ウミウシ)

7出津教会(出津文化村)

まぶしく輝く白壁と低い天井、独特のフォルムがド・ロ神父の独創性

 どこからか鐘の音が聞こえてきました。旧出津救助院から鐘の音の鳴るほうへと、山手に向かってみると、今回の旅の終着点、出津教会に辿り着きました。外海全体に鳴り響くこの鐘は、ド・ロ神父がフランスから取り寄せた当時のもの。教会全体のカタチを見て下さい。今回の旅で訪れたほかの教会とはちょっと違うと思いませんか? 角力灘から吹き寄せる海風に耐えるために、天井が低く造られているそうです。
旅人コメント

「出津教会は、さだまさし原作の映画『解夏』の舞台になったんですよね。大沢たかおと石田ゆり子の2人が、角力灘の向こうに見える五島を見るために訪れた場所だったと思うけど。外海の海岸線をドライブしてました!」(ヤムヤム)

参考文献

『旅する長崎学5 キリシタン文化5』
特集2 宣教師が尽くした日本の教育事業
特集3 キリシタンの夢 日本人のための天主堂が建つ
特集4 教会がある風景は長崎の歴史を語る文化遺産

長崎県の文化財
佐世保市教育委員会社会教育課資料

スタート地点までのアクセス

宝亀教会

所在
長崎県平戸市宝亀町1170
お問い合わせ
宝亀教会 TEL/0950-28-0324
開門
6:00〜17:00
ミサ
土曜日19:00(4〜9月は19:30) 日曜日9:30
アクセス
車の場合は、佐世保方面から国道204号線を北上し平戸大橋(有料)を渡る。左折して平戸大橋バイパスを通り国道383号線を南下し約15分。宝亀小学校を過ぎたら右折して約3分。
バスの場合は、佐世保駅より西肥バス〔平戸〕行きに乗車し<<平戸桟橋>>で下車(乗車時間は約90分)。〔宮之浦〕行きに乗り換え、〔宝亀〕で下車(乗車時間は約20分)。徒歩10分。
松浦鉄道の場合は、「たびら平戸口」下車、<<平戸口駅前亀>>より西肥バス〔平戸桟橋〕行きに乗車、終点<<平戸桟橋>>で下車(乗車時間は約15分)。〔宮之浦〕行きに乗り換え、<<宝亀>>で下車(乗車時間は約20分)。
● JR佐世保駅・松浦鉄道「たびら平戸口」までのアクセスは「ながさき旅ねっと アクセス」をご覧ください。

うんちくバンク

人物
  • 遠藤周作
  • 黒島天主堂をつくったマルマン神父
  • 外海に生涯を捧げたド・ロ神父
  • 鉄川与助
  • ペルー
  • マルマン神父
歴史事件
  • どうやって「世界遺産」に決まるの?
資料
  • パリ外国宣教会
場所
  • 大浦天主堂
  • 大野教会
  • 旧出津救助院(出津文化村)
  • 黒島天主堂
  • 出津教会 (出津文化村)
  • 出津文化村
  • 田平天主堂
  • ド・ロ神父遺跡(出津文化村)
  • 宝亀教会
その他
  • 教会見学のQ&A
  • 教会見学のマナー
  • ド・ロ壁ってなに?

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