ながさき歴史の旅

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ながさき歴史散歩

第5回 世界遺産候補を巡る旅 下五島編

しまの教会群が物語るキリシタンの歴史
花

 「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が世界遺産の候補となりました。長崎におけるキリスト教の歴史は、伝来、繁栄、禁教、弾圧のあと、長い潜伏を経て奇跡の復活を遂げ、その後各地に教会が建てられ、いまに続いています。この世界宗教史上まれにみる激動の歴史と、厳しい迫害の中で何代にもわたって受け継がれてきた篤い信仰の姿を、いまもなお現存する教会や史跡の数々が物語っています。現在、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」には、県内各地に残るキリシタンの歴史を物語る文化遺産のなかでも、代表的な史跡や教会が構成資産として、県内20箇所がピックアップされています。

 このウェブサイト「旅する長崎学<<たびなが>>」では、この20箇所を「平戸&外海編」「長崎市街&島原編」「下五島編」「上五島編」と、4編に分けてご紹介します。長崎のキリシタンの歴史を旅してそのすばらしさと価値を体感すると、これらの“長崎のたからもの”をずっと大切にして、世界中の人にも知ってほしいと思わずにはいられません。今回は、「下五島編」です。このエリアに点在する貴重な教会と遺産を旅してきました。教会堂は祈りの場所ですから、マナーを守って見学させていただきましょう。

歴史のとびら
教会

 長崎におけるキリスト教の歴史は、1550年、平戸に来航したフランシスコ・ザビエルの布教にはじまります。海外からやってきた宣教師たちの熱心な宣教活動と、南蛮貿易の利を得たい領主たちの思惑もはたらいて、キリシタンの数は増え続けますが、一転して受難の時代を迎えることになります。禁教下での弾圧による迫害、そして殉教・・・。1644年には日本国内にはひとりの神父もいなくなってしまいますが、キリシタンたちは先祖から伝えられた伝承やマリア信仰を心のよりどころに、潜伏しながらその教えを守り続けるのです。こうして受け継がれた篤い信仰は、約250年もの長い潜伏の時を経て、1865年、大浦天主堂を舞台に起こった「信徒発見」とよばれる信仰表明の感動的な瞬間へとつながり、日本キリシタンの復活は世界中に感動と衝撃を与えました。こののち、信仰の証として信徒たちの手によって建てられた教会は、まさに復活のシンボル的な存在となったことでしょう。長崎の自然環境とみごとに調和した幻想的で厳かな空間はもちろん、西洋と日本の技術が折り込まれた美しく独創的な意匠は、訪れる人々を魅了します。これらの遺産は450年以上もの歴史が育んだ結晶なのです。

 現在、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の構成資産としてピックアップされているのは20資産。そのうち教会が12件、キリスト教関連遺産は史跡など8件となっています。この長崎の“たから”を、次の世代へと大切に受け継ぎたい。2007年、長崎県は世界遺産の登録へ向けての大きな一歩を踏み出しました。

散歩コース

スタート地点までのアクセス

◎所要時間のめやす:1泊2日

1堂崎教会

↓福江島の福江港より海上タクシーで約20分

2旧五輪教会堂

↓福江島の福江港に戻り、奈留島の奈留港へフェリーで約40分+車で約15分

3江上教会

1堂崎教会

ほら貝の合図に、五島の信者たちが小舟で集まった教会堂

 16世紀の中頃、宣教師と外科医の2つの顔を持つポルトガル人のルイス・デ・アルメイダが奥浦に着きました。これが、五島の人々がキリスト教と出会った最初でした。アルメイダが五島でおこなった布教活動で、五島に教会が建ち、キリスト教の洗礼を受ける人たちが増えました。しかし、豊臣秀吉の伴天連追放令、さらに徳川幕府が発布した禁教令によって、キリシタンは幾度も迫害・弾圧を受ける苦難の時代が長く続きます。

 明治に入って、禁教令の高札が撤廃されると、信者たちの要請で堂崎にもパリ外国宣教会から派遣された神父が訪れ、仮聖堂も建てられました。そして1908年(明治41)、五島では初めての本格的なゴシック様式の教会堂が、奥浦湾の岬「堂崎」に完成! ペルー神父の設計・指導によるもので、その後の天主堂建設の模範となりました。堂崎教会の赤いレンガは、はるばるイタリアから運んだものだそうです。ミサのはじまりは、ホラ貝で知らされ、この音を聞いた信者たちは、小舟を漕いで海辺に建つこの教会に集まってきたといわれています。

 現在この教会堂は、キリシタン資料館となっていて、禁教下の歴史を物語る貴重なキリシタン関連の資料を見ることができます。

旅人コメント

「2月になると、福江は原生椿が咲き誇ります。」(ローザ)

「椿といえば、椿油を使った五島うどんが名物ですよね!のど越しのいい麺は最高。」(ちか)

2旧五輪教会堂

初期の教会建築の歴史を物語る、木造の貴重な教会堂

 福江島のすぐ北側にあるのが久賀島で、久賀湾が入り込んだ馬蹄形をしています。五輪はこの久賀島(ひさかじま)にあるのですが、地区に行く大きな道がなくて、島の中でも孤島のようなところ。ここに建つ旧五輪教会堂は、五島で最も古い教会です。実は、1881年(明治14)、同じ久賀島の浜脇地区に「浜脇教会」として建てられたものを、1931年(昭和6)に解体して船で運んで、この地に創建当時のままに移築しました。和風の民家を思わせる外観ですが、中は三廊式、リブ・ヴォールト天井の典型的な教会建築の様式となっています。

 海辺に建つ木造教会のため痛みが激しく、数度に渡って取り壊しの危機もあったといいますが、大切に守られてきたことで、目には見えないその歴史を私たちに伝えてくれています。いつまでも大事にしていきたい貴重な教会堂のひとつです。

 旧五輪教会堂までのアクセスは、ちょっと割高ですが五島ならではの海上タクシーを使うのも旅の醍醐味。また、木口汽船さんでは福江港から田ノ上までのフェリーを運航しているほかに、「教会巡礼コース」があります。全コースにガイドさんが添乗して案内してくれますので歴史を満喫できますよ!フェリーで久賀島まで渡ったとしたら、田ノ浦から県道167号線を蕨(わらび)方面への一本道を歩きます。大開から白岳の道なき道をひたすら歩いて約80分。信仰を守った場所が、陸の孤島にあることを体感できます。

3江上教会

奈留島のクリーム色の壁が美しい教会。

 久賀島のすぐ北側にあるのが奈留島。江上教会は、最盛期には60名以上の信徒たちが集まったという中五島中心の教会堂です。1918年(大正7)、鉄川与助の設計・施工によって建てられました。

 屋根の上に十字架はありませんが、鬼瓦に刻まれた十字架がかえって印象的です。教会堂の中に入ると、天井や窓からロマネスク様式の厳粛な雰囲気がうかがえます。島に建つ木造の教会堂なので、海からの湿気に負けないよう、床下をやや高く設計してあるそうです。そして窓ガラスを見て下さい! 花模様はステンドではなく、丁寧に手描きされたもの。心が伝わります。

 近年、一部修復と外観の塗装をして、一新した江上教会。修復には、奈留島の子どもから大人までが参加しました。海岸から砂利を運ぶその様子は、大正時代の建設当初を思い描かせる光景だったそうですよ。

 下五島エリアに点在する3つの教会堂を訪れてみて、島という景観のなかに溶け込むようにひっそりと、でも健気に受け継いできた信仰をあらわすかのようにどっしりと、小さいけれど存在感のある教会堂の姿に、キリスト教の布教の歴史を見る思いがしました。頭ヶ島天主堂からはじまる次の上五島の旅に期待が膨らみます。次回の「上五島編」もお楽しみに!

参考文献

『旅する長崎学4 キリシタン文化4』
特集4-第4章 五島のキリシタンと信徒発見後の迫害

『旅する長崎学5 キリシタン文化5』
特集3-第2章 教会建築の第一人者 鉄川与助は仏教徒の棟梁
特集4 教会がある風景は長崎の歴史を語る文化遺産

『文化百選 五島編』
企画/長崎県 製作/長崎新聞社

『文化百選 海外交流編
企画/長崎県 製作/長崎新聞社

長崎県の文化財
長崎から世界遺産を「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」

スタート地点までのアクセス

堂崎教会

所在
長崎県五島市奥浦町堂崎2019(福江島)
お問い合わせ
堂崎教会 キリシタン資料館 TEL/0959-73-0705
開館時間
9:00〜17:00(11月11日〜3月20日は9:00〜16:00)
休館日
12月30日〜1月2日
料金
大人300円 中高生150円 子ども100円
ミサ
第1日曜日5:30〜
駐車場
50台
注意
教会堂内部の撮影禁止。
アクセス
車…福江島にある福江港より県道162号線を北上し約15分。福江空港から約20分。
バス…福江より五島バス〔戸岐〕行きに乗車し≪堂崎天主堂入口≫で下車(所要時間は約20分)。徒歩10分。

福江島までのアクセス

■飛行機で福江空港まで行く!
長崎空港…ORCで約30分。
福岡空港…ANAで約40分。
関西空港(大阪)…ANAで約80分。但し夏の期間のみ運行。
*福江空港からは、五島バス〔巡回バス〕に乗車し≪福江≫で下車(所要時間は約5分)。〔戸岐〕行きに乗り換え≪堂崎天主堂入口≫で下車(所要時間は約20分)。徒歩10分。

■フェリーで福江港まで行く!
長崎空港ターミナル…九州商船「ジェットフォイル(長崎-奈良尾-福江)」で約1時間30分。または、フェリーで約3時間30分。
博多埠頭第2ターミナル…野母商船「太古(博多-宇久-小値賀-青方-若松-奈留-福江)」で約9時間30分。

● 長崎港ターミナル・博多埠頭第2ターミナル、長崎空港・福岡空港・関西空港までのアクセスは「ながさき旅ねっと アクセス」をご覧ください。

五島を旅する前に!
教会見学は予約が必要な場合がありますから、事前に連絡しましょう。また、教会ではミサや冠婚葬祭がおこなわれますので、予約をしていても見学できないことがあることを心得ておきましょう。
海上タクシーや遊覧船を利用される場合は、事前に予約を入れる際に、旅のルートを相談してみましょう。
悪天候のためフェリーや高速船が運休になる場合があります。ゆとりをもって旅の計画をたてましょう。

うんちくバンク

人物
  • 鉄川与助
  • ペルー
  • 堂崎教会建築を指導したペルー神父
  • マルマン神父
  • 宣教師と外科医の2つの顔を持つルイス・デ・アルメイダ
歴史事件
  • 五島で初めてのキリスト教布教
  • 明治に起こった迫害
資料
  • パリ外国宣教会
場所
  • 江上教会
  • 大浦天主堂
  • 頭ヶ島天主堂
  • 旧五輪教会堂
  • 堂崎教会
その他
  • 教会見学のQ&A
  • 教会見学のマナー
  • キリシタンたちが五島へ移住
  • 五島ってどんなところ?
  • 聖母マリアのモチーフは純白の椿!?
  • 椿
  • 伴天連
  • マルマン神父とペルー神父

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