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三川内焼

その6 江戸後期の細工物〜葡萄栗鼠置物と瓜に栗鼠香炉〜(2)

 
[図1] 白磁瓜栗鼠形香炉 平戸焼(三川内焼) 江戸時代後期 長崎歴史文化博物館蔵
 

今回は、瓜に乗ったリスを象った白磁の香炉をご紹介します[図1]。
前回ご紹介した安政6年(1859)銘の絵に描かれた置物と比べると、ブドウと瓜を入れ替えただけのように、両者の構図はよく似ています。
  リスは、正面だけでなく横や後ろ姿など、どの角度から見ても今にも動き出しそうな姿で表現され、躍動感があります[図2]。そうした豊かな表現力を秘めた当時の陶工の技術力の高さがうかがえます。


[図2]
 

 このように生き生きとした印象を与えるリスですが、細部に目を向けると、手に生えた毛や爪の一つ一つまで丁寧に作り込まれています[図3]。


[図3]
 

 リスが乗っている瓜は、胴に7本の筋があるふっくらとした楕円形をし、ヘソにあたる部分には細かな凹凸が表現されています。この形状から、日本で古くから賞味され、俳句の夏の季語にもなっている真桑瓜(マクワウリ)を象っているようです[図4]。
 


[図4]

 瓜の内部は空洞で、虫食い穴のある葉は、取り外しができることから、香炉の火屋であることがわかります[図5]。使用された形跡はなく、置物として賞玩されていたようです。
 


[図5]


 細部に至るまで丁寧に作られ、平戸焼の名品といえる香炉ですが、前回ご紹介した葡萄栗鼠置物の絵と同じ安政6年頃の作品だと考えれば、幕末の三川内における細工技術の様相を知る手がかりの一つと見ることもできます。この香炉には銘などが無く、どの職人が作ったのかわかりませんが、安政末期(1860)には、御細工人として口石廣治・今村恒作・今村幾太郎・今村冨右衛門・今村助太郎・今村槌太郎・田中安治・今村利右衛門・椋尾才助・椋尾久米蔵・今村弥次エ門・口石鏡太郎・今村松治・金氏廣吉・椋尾菊蔵・古川庄作・田中記太夫・今村平作といった18名の職人が活躍していました。

【長崎県文化振興課 松下久子】


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