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三川内焼

三川内焼 その7 椋尾菊蔵作 白磁虎置物(1)

 今回は、手のひらに乗るほどの小さな虎の置物をご紹介します[図1]。
白磁虎置物 椋尾菊蔵作 明治7年(1874) 高さ14cm 長崎歴史文化博物館蔵
[図1]白磁虎置物 椋尾菊蔵作 明治7年(1874) 高さ14cm 長崎歴史文化博物館蔵

 普通、虎といえば黄色に黒の縞模様をイメージすると思いますが、この虎は真っ白です。しかし、鋭く睨みつける目と太い四肢、頭から肩、背中にかけて施されたヘラ彫りによる縞模様によって、猛獣の虎であることがわかります[図2]。
図2 同 裏[図2 同 裏]

 色が無いため、かえって目つきの鋭さや四肢の力強さといった造形的な表現が強調されていますが、その一方で、丸味を帯びた顔や波打った口元は愛嬌が感じられ、手元に置いて愛玩したくなるような小品です。

 三川内皿山は、江戸時代から緻密な作品作りを得意としてきた歴史があり、明治時代になってもその流れは継承されました。細部のつくりまでこだわった精緻な造形作品がある一方で、この虎置物のように細かな技法よりも全体の雰囲気と存在感を大事にした表現手法が、明治になると多く見られるようになります。

 決して、手を抜いているわけではありません。瞳は凹ませ、呉須で黒色を点じています。足の裏側では、普段見えない部分であるにもかかわらず、指を一本ずつ立体的に表現しています。

 無釉の底部には、「明治七 戌年六月日 三川内山 椋尾菊蔵 作之」という銘が刻まれています。このことから、明治7年(1874)に三川内の陶工・椋尾菊蔵がこの虎置物を製作したことがわかります[図3]。
図3 同 底部[図3]同 底部

 製作年代と作者がわかることから、明治初期の三川内皿山における細工物(ロクロを使わない造形作品)の実態を知る貴重な資料の一つといえます。この、シンプルながら存在感のある虎の置物を作った椋尾菊蔵とは、どんな人物だったのでしょうか。(つづく)
                                      【長崎県文化振興課 松下久子】 


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