Mikawachi Ware

(3) Elaborate Mikawachi Ware Objects from Hirado

三川内焼の特徴の一つに、細工物(サイクモノ)が多いことが挙げられます。
細工物とは、焼物の場合、轆轤(ロクロ)を使用せず型やヘラなどの道具を用いて成形した作品のことで、捻り細工(ヒネリザイク)とも呼ばれます。動物をかたどった置物(図1)や根付(図2)、水滴、三番叟(サンバソウ)の衣装を着た猿の首が回り舌も飛び出すからくり人形(図3)、花瓶の装飾として付けられた細工物の龍(図4)など多様で、造形的な工夫が凝らされた作品が多く、見る人の目を惹きつけます。

 

図1 白磁鉄彩鼠唐黍形置物 19世紀後半 長さ13cm 長崎歴史文化博物館蔵

 

図2 瑠璃釉獅子形根付 19世紀 長さ 5cm 長崎歴史文化博物館蔵

 

図3 瑠璃錆釉猿形舌出人形 20世紀前半 高さ21cm 長崎歴史文化博物館蔵

 

図4 染付山水文獅子龍貼付け広口瓶 19世紀後半~20世紀前半 高さ36cm 長崎歴史文化博物館蔵

 

このような細工物は、三川内ではいつ頃から作りはじめられたのでしょうか?
正確なところはわかっていませんが、それは三川内焼が平戸焼と呼ばれた江戸時代にまでさかのぼります。『三川内窯業沿革史』によると、細工物は江戸時代前期の寛文年間(1661-1673)には作られ、元禄(1688-1704)頃になると一層盛んであったとあり、江戸時代の早い時期から細工物が作られていたことが推測できます。
このことを裏付けるかのように、かつて平戸藩の上屋敷があった場所(向柳原町遺跡/東京都台東区浅草橋5丁目1番)からは、元禄頃の平戸焼(三川内焼)の繊細な細工物の破片が発掘調査によって多数出土しています。

17世紀後半から培われてきた三川内皿山の細工技術は、江戸時代後期になると精巧さを高め精緻で洗練された作品が数多く作り出されました。次回以降は製作年代が明らかな作品を通して三川内皿山の細工技術を具体的に見ていきたいと思います。